こんにちは。

脳梗塞リハビリActive向山店、店長の河合です。

慢性期脳卒中患者さんの抱える「歩けるのに活動範囲が広がらない」悩み

慢性期脳卒中の患者さんで「歩くのが遅くて活動範囲が広がらない」というお悩みを抱えている方が多いです。

「家の中では歩けてはいるけど、出かける気になれなくて」

「周りの人に追い越されるのが怖くて」

「横断歩道を渡りきれる気がしない」

そんな声も少なくありません。

ご本人は一生懸命リハビリに取り組んでいます。

それでも「歩けているけど、活動範囲が広がらない」という感覚だけが残ってしまいます。

この悩みは周りからはなかなか理解されにくいですが、当事者にとっては切実な問題です。

【なぜその悩みが起こるのか】筋力だけでは解決しない歩行速度のメカニズム

よく聞くのが

「足の力が弱いから仕方ない」という言葉です。

確かに筋力は大切です。

ですが、実際の現場を見ていると、筋トレを頑張っているのに歩く速さが変わらないというケースが多くあります。

なぜでしょうか?

歩く速さは

・筋力
・体力
・バランス
・リズム

これらが噛み合うことで向上します。

そのため筋トレだけでは速く歩けるようにはならないんです。

そこで今回おすすめするのが高強度トレーニング!

高強度と聞くと「しんどそう」「できるかな」と思う方もいるかもしれません。

これはちょっときつい負荷で歩く。

ですが、安心してください。

【研究概要】歩行練習の「強さ」に注目した検証

実はそれが歩く速さを改善してくれる1歩になるかもしれません。

今回紹介する研究では慢性期脳卒中の方を対象に歩行練習の「強さ」に注目しました。

行ったのはトレッドミルでの歩行練習です。

ここで次の2つを比べました。

・少しきついと感じる速さで歩くグループ

・楽に歩ける速さで歩くグループ

頻度は週に3回、3ヶ月間。

調べたのは

「どのくらい速く歩けるようになったか」

「どのくらい長く歩けるようになったか」

といった日常生活にも直結する項目です。

この研究で調べたかったのは、

「歩行練習は楽なペースと少しきついペース、どちらが生活を変えるのか?」

という、とてもシンプルな疑問でした。

【結果として分かったこと】「少しきつい」ペースの圧倒的な改善効果

結果ははっきりしていました。

少しきついペースで歩いたグループの方が歩く速さ歩ける距離、どちらも大きく改善したんですね!

一方、楽なペースで続けたグループでは、大きな変化はあまり見られませんでした。

これらを日常生活に置き換えてみると、

「横断歩道を余裕を持って渡れる」

「買い物の途中で立ち止まらずに済む」

このような変化につながる可能性があります。

ただ歩ける、ではなく

「使える歩き」に近づいたそう表現できる結果でした。

【なぜ良くなったのか】脳と体力に刺激を与える複合的なアプローチ

なぜ「少しきつい歩行」が効果的だったのでしょうか。

ポイントは体だけでなく、脳と体力の両方に刺激が入ることです。

少し速く歩こうとすると呼吸が深くなる、足の振り出しが自然と大きくなる、リズムを保とうと脳が動く。

この状態は、普段のゆっくりした歩行ではなかなか作れません。

例えるとしたら、自転車に乗れるけれど、ずっと低いギアのまま走っている状態です。

少しギアを上げることで、初めて「スムーズに進む感覚」を体が思い出します。

私自身も現場で「外出は難しいかなと思っていた方が、歩くテンポを変えることでスピードが上がり外出ができるようになった」という方を見てきました。

トレッドミルのいいところは

  • 一定の速さを保てる
  • 安全に練習を行える
  • 歩く量をしっかり確保できる

この3点です。

「少しきつい」を安心して実践できる環境が整っています。

【今日からできること】無理なく「少しきつい」を取り入れる実践方法

いきなりハードな運動をする必要はありません。

例えば、いつもの歩行の中で30秒だけ少し速く歩く時間を作るこれだけでも十分です。

また、「今日はここまで歩いたら少しペースを上げてみよう」といった小さな目標を決めるのもおすすめです。

大切なのは

「ずっときつく」ではなく「少しきつい時間を入れる」こと。

注意すべき点もあります。

体調が悪い日やふらつきが強い日は無理をしないでください。

不安がある場合は必ず専門家に相談しましょう。

【まとめ】「歩けるけど歩けない」を変える一歩

歩けているのに活動範囲が広がらない。その原因は筋力不足だけではありません。

歩く速さに少し目を向けることで世界が広がる可能性があります。「歩けるけど歩けない」は変えられます。

今回の内容が日々のリハビリのお役に立てると幸いです。