指の痙縮は、神経障害や脳卒中後などの病気により起こることがあります。

痙縮には筋肉が硬くなり、指を思うように動かすことができなくなるという問題があります。

そこで、最近注目されているのが「局所振動刺激」です。

今回は、局所振動刺激による手指の痙縮改善について、根拠とやり方を簡単にご紹介いたします。

局所振動刺激とは何か?

筋の筋紡錘を刺激することによるIa感覚入力や緊張性振動反射TVRを利用する方法です。

緊張性振動反射

筋への振動刺激が100 Hz 前後の場合、筋紡錘のGIa線維の興奮により、刺激された筋に持続性の筋収縮と、その拮抗筋に相反抑制が生じると言われており、この現象を緊張性振動反射(TVR)といわれる

拮抗筋バイブレーターにより痙性拮抗筋に相反性抑制を及ぼし痙縮を軽減する効果は、筋紡錘→ GIa 線維→ 脊髄後根→抑制介在シナプス→拮抗筋の抑制の機序で説明されている

梶原敏夫 : 最新リハビリテーション医学(米本恭三 監修)第 3 章 : 障害の病態生理と治療,(9)痙縮・固縮, 医歯薬出版, 東京, 2000 ; pp 126.132

振動刺激のもう1つの特徴として、シナプス前抑制によると考えられるH反射やT反射の抑制が挙げられる。

局所的振動刺激は、結果的に相反神経抑制とシナプス前抑制というメカニズムが生じて、関節可動域制限の一つである筋緊張亢進を軽減させることができると考えられています。(Okita et al ,.2008)

局所振動刺激による指の痙縮改善については、以下の研究でその効果が報告されています。

局所振動刺激による手関節屈筋群の筋緊張軽減効果を調べた研究では、20分後まで筋緊張評価のスケールModified ashworth scaleのスコアが改善したが、20分後をピークに抑制効果は減弱するとされている。

上肢に対する局所的振動刺激の効果を検証したシステマティックレビュー(SR)では、リーチ動作において有意な改善が示されているが、Wolf Motor Function TestやJebsen-Taylor Hand Function Test、Box and block test といった機能的動作の改善効果はなかったとされている。(理学療法ガイドライン2021)

局所的振動刺激単体ではMASを軽減させる効果や、脊髄神経機能を改善させる可能性があるが、上司のパフォーマンスを高めるかどうかは未だ不明です。

ほかの方法と組み合わせて、「手指屈筋群の痙縮によって阻害されている動作を達成するために局所振動刺激を用いる」ことが適切な方法なのではないか?と考えています。

【局所振動刺激の手指への実施方法】

局所振動刺激を行うには、振動マシンが必要です。振動マシンは、通常のマッサージ機とは異なり、指先に装着することができる小型のものが多く、手軽に使えるという特徴があります。

やり方は、以下の通りです。

  1. 振動マシンを手に持ち、指先に装着する。
  2. 振動マシンを手の平に当て、スイッチを入れる。
  3. 振動マシンをゆっくりと指先に移動し、痙縮している指の筋肉を刺激する。
  4. 振動刺激を1分以上、5分未満続ける。
  5. 指の可動域が広がるまで続ける。

振動マシンの振動の周波数は機械によって異なります。

こちらの機械が比較的安価かつ2パターンで下のスイッチが同名筋の筋緊張抑制効果、上のスイッチが緊張性振動反射による拮抗筋の筋緊張抑制効果が期待できます。

また今回の場合は筋緊張に対する方法になりますので、そのほかの目的の場合には変わってくる可能性があります。

まずは低い周波数、弱い振動から始め、徐々に強くすることがおすすめです。また、振動マシンを使う前には、医師や理学療法士に相談することをおすすめします。

【まとめ】

有害事象として、筋肉痛や軽度の違和感などがあるとされていますが、振動障害と呼ばれるほどの悪影響は局所的振動刺激では生じない可能性が高いため、体への害は気にするほどないとされています。

ただし直接皮膚に当てるため、当てる部位の付近の体内に金属がある場合や、皮膚が弱い方、皮膚に傷がある方は注意が必要です。

指の痙縮は、日常生活に支障をきたすことがありますが、局所振動刺激を行うことで改善が期待できます。

最近では、振動マシンの種類も多く、手軽に使用できるものがあるため、自宅でも簡単に試すことができます。

ただし、自己判断で行わず、担当のセラピストに相談することをおすすめします。

最後までありがとうございました!