今回は運動イメージとは何か?〜効果・エビデンスまで解説していきます!

運動イメージは、ワーキングメモリーを利用した認知過程の活性化である

Farah MJ: The neural basis of mental imagery. Trends Neurosci 12: 395–399, 1989.

運動イメージは実際の運動を伴わないが、運動している時と同様またはそれに準ずる知覚的な体験が生じている心理的・認知過程であるとされています。

運動イメージのイメージ

元々はスポーツ領域で用いられることが多かった練習方法ですが、近年リハビリテーションの領域でも多く活用がされ、多くの報告が出てきています。

運動イメージ療法を用いた技術練習によりスキルの獲得を図る練習方法をメンタルプラクティスといいます。

メンタルプラクティスで有名なものは

  • 運動観察療法
  • ミラーセラピー
  • 運動イメージ

などがあります。

これらの方法は、さまざまな感覚情報を元にしてイメージの想起を促す方法となります。

運動イメージの種類

運動イメージには大きく2つの種類があるとされています。

それが

三人称イメージ

他者の運動を見ている状況をイメージする方法

視覚的運動イメージ(Visuo-motor imagery)と呼ばれる

一人称イメージ

自身が運動している状況をイメージする方法

筋感覚イメージ(Kinetic motor imagery)と呼ばれる

視覚的イメージと筋感覚イメージでは働く脳の領域が違うとされており、どちらを用いるべきかは、目的によって変化してくると考えられます。

ただし現時点で第三者による脳領域の活動を断定することは難しいのではないか?と考えれているため、
あくまで参考として筋感覚イメージは運動関連領域、視覚的イメージでは視覚関連領域が主として働く可能性がある、という認識が良いのではないかと思います。

運動イメージは脳卒中後のどんな問題に効果的なのか?

脳卒中リハビリの基本的な指針を決めていく「脳卒中治療ガイドライン2021」では、

歩行領域・バランス領域

記載なし

上肢機能障害

視覚刺激や運動イメージの想起を

用いた訓練を行うことは妥当(推奨度B エビデンスレベル中)

とされています。

ただし、歩行に対しても効果がない、というわけではなく、条件付きで効果が報告されています。
また腕のリハビリにも効果がある!というわけではなく、実施方法と適応を考えた上で実施することで一定の効果が得られる可能性があるリハビリとなります。

急性期の上肢機能障害には効果があるか?

腕の機能は、

運動機能→「指や手首を思うように動かすことができる能力」

運動パフォーマンス→「コップなどのものをとるための腕の総合的な能力」

の2種類に大別されます。

このうち発症から1ヶ月未満の急性期の方への運動イメージは「運動機能」の方に効果的であるとされています。(Barclay RE et al ,.2020)

回復期の上肢機能障害には効果があるか?

発症から6ヶ月未満の回復期の方への運動イメージは「運動機能」の方に効果的であるとされています。(Barclay RE et al ,.2020)

慢性期の上肢機能障害には効果があるか?

発症から6ヶ月以降の慢性期の方への運動イメージは「運動機能」「運動パフォーマンス」の両方に効果的であるとされています。(Barclay RE et al ,.2020)

しかしながら、運動イメージ単体では十分な効果は認められていないため、通常のリハビリテーション(電気刺激や日常生活動作練習、課題指向型練習など)に組み合わせていくことで、効果的な可能性があります!

まとめると

脳卒中後の上肢運動障害に運動イメージは有効か?

急性期の下肢機能障害

下肢の運動機能を評価する方法として「Brunnstrom recovery stage」や「Fugl meyer assessment」などがありますが、

急性期の下肢運動機能障害(FMA LE)には運動イメージは有効であるとはいえない可能性があります。(Silva S et al,.2020)

回復期の下肢機能障害

回復期の下肢運動機能障害(FMA LE)には運動イメージは有効であるとはいえない可能性があります。(Silva S et al,.2020)

慢性期の下肢機能障害

慢性期の下肢運動機能障害(FMA LE)には運動イメージは有効である可能性があります。(Silva S et al,.2020)

ただしこちらに関しては一人称イメージ(筋感覚イメージ)が効果的である可能性高く、運動イメージ能力にもかなり左右される可能性がありそうです。

歩行障害には有効か?

歩行速度には有効だとされていますが、まだはっきりと効果が定まっているわけではないため、適応が重要になってきます。

まとめると

脳卒中後の下肢機能障害に運動イメージは有効?

運動イメージの適応は?

一つは、運動プログラム障害がある方に有効ではないか?と考えれています。(Thieme H et al,.2018)

私たちは手を動かす前に、脳内でどうやってこの運動を行うか?という身体の使い方のプログラムを立てているとされています。このプログラムが作れないと運動障害が出現することもわかっています。

ではこの運動イメージに障害があるかどうか…?をどのように判断するのでしょうか?

いくつか方法があるとされていますが、

KVIQ(kinesthetic and visual imagery questionnaire)

これは質問紙で行う方法で、

20項目の運動を実際にイメージして明瞭度を質問しながら点数をつけていく方法。

コミュニケーションが取れる場合には有効だと考えられる。

メンタルクロノメトリー

使うものはストップウォッチのみ。

実際の運動をイメージしていただき、秒数を測る。

実際に運動をしてその誤差をチェックするもの。

簡易的に行えるため汎用性が高い印象

運動イメージ能力を評価することで、運動イメージ自体が効果があったかどうか?を判別するのに重要だと考えられます。

運動イメージの具体的な手順

脳卒中後遺症に対する一人称運動イメージの具体的なやり方については、以下の手順に従って実践することができます。

  1. 運動イメージの準備
    イメージする運動を決めます。例えば、歩行や腕の挙上・曲げなど、その人が行いたい運動を選びます。また、その運動がどのように感じられるかを考え、具体的なイメージを用意。
  2. 心身リラックス
    次に、落ち着いた状態になるために、深呼吸や瞑想などの方法で心身をリラックスさせます。自分の呼吸を意識し、全身の緊張を緩めることが大切です。
  3. イメージを開始
    準備ができたら、目を閉じてイメージを開始します。想像力を使い、自分自身がその運動を行っている様子をイメージします。自分の目線で、手足の動きや感覚をイメージします。
  4. イメージを繰り返す
    イメージを1回行ったら、また深呼吸をして、同じ運動をイメージします。このように、何度も繰り返して行います。イメージをする際には、自分自身が実際にその運動を行っているような感覚を意識することが大切です。
  5. 運動イメージの終了
    運動イメージを終了するときには、再び深呼吸をして、ゆっくりと目を開けます。また、イメージした運動を実際に行ってみて、イメージが現実にどのように近づいたか確認することも有効です。

以上の手順に従って、効果的な方法として、
一人称運動イメージを行うことで、脳卒中後遺症による運動障害の改善につながることがあります。

ただし、個人差があるため、医師や担当セラピストと相談しながら取り組むことが推奨されます。

また運動機能を向上させたい場面に近い状況で運動イメージをすることで効果がより高くなる可能性も報告されています。(例:コップを握った状態で行う、立位で行うなど)

まとめ

あくてぃぶでも運動イメージを組み合わせて、オーダーメイドのプログラムを作成していくことがあります。
手が動かしにくい、足が動かしにくいといった症状の方に対しては、運動イメージをはじめとするメンタルプラクティスをリハビリテーションの中で併用することで、パフォーマンスや分離運動が実現できたりすることを経験します。

ただし時期や適応、イメージ能力によって効果があるかどうかは変わってくるため、

実施する場合には担当セラピストさんと相談しながら行うことが好ましいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!