脳卒中後の代表的な運動障害として「痙縮」というものがあります。

これは、筋肉が伸びたら縮むという「伸張反射」がコントロールできず、本来収縮しなくても良いタイミングで筋肉が伸びた刺激に対して縮んでしまう現象が主です。

よくマッサージやストレッチが用いられることが多い筋緊張異常ですが…

なかなか緊張した筋肉を緩めることが難しく、運動上手く行えない…そんな経験はありませんか?

そこで今回は、マッサージやストレッチ以外の方法を選択肢にしてみてはいかがでしょうか?という内容で解説していきます!

筋緊張って何?

筋緊張とは、

神経生理学的に神経支配されている筋に、持続的に不随意に生じている筋の一定の緊張状態をいう。筋緊張は整体の姿勢保持機構・体温調節機構に関与している。姿勢保持機構に関しては、運動あるいは姿勢保持の際に活動する骨格筋の準備状態に重要な意味をもっている。

根本明宜:筋緊張異常とリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med 2020;57:1069-1076

私たちが動いていく時に、筋肉が準備されている必要がありますが、この準備ができていない、つまり筋緊張が準備できていない場合には、活動制限につながっていきます。

通常リラックスすると低く、筋力を発揮する時には筋緊張は高くなります。

この時に正常範囲があり、この範囲を逸脱すると亢進または低下し両者ともに、十分な筋力を発揮することが難しくなります

正常範囲内でコントロールできていれば、基本的には問題が起こり得ないのですが、この正常範囲というのは動作によっても変わってきます。

例えば、不安定な足場の時には筋緊張を調整する範囲が大きくなると考えられますし、重たいものを持っている時には基本的には筋緊張が高い状態をキープすることが重要になってきます。

ただ、重たいものを持っていないのに、常に筋緊張を高くしてしまっている状態になってしまうこともあります。

そうすると「循環不全などで血流低下」が起こり場合によっては、痛みが出たり活動制限が起こることもあります。

筋緊張が亢進してしまう原因

筋緊張が異常に高くなってしまう原因としては

中枢性と末梢性の2つに大別されます!

中枢性には、

  • 痙縮
  • 固縮

があります。

そして一般的に筋肉が張ってしまうと表現される末梢性には

  • 防御性収縮
  • 筋の短縮
  • 関節拘縮
  • 軟部組織の線維化

などが考えられます。

筋緊張が低下してしまう原因

筋緊張は一般的には低下する病態(1としては、

  • 脳血管障害,脊髄損傷,小脳疾患などによる中枢神経障害
  • ギラン・バレー症候群や末梢神経障害による筋力の低下
  • 筋炎による筋組織の破壊
  • 廃用による非神経的な変化として筋萎縮や筋節数の変化
  • 神経筋接合部の障害
  • 電解質異常
  • 筋周囲の軟部組織の緩さ
  • 骨格の構造、支点の緩み
  • がんの骨転移における筋力低下

などが考えられます。

筋緊張亢進に対する介入方法とは?

筋緊張亢進に対する介入方法についていくつか解説していきます。

もう一度、わかりやすく筋緊張異常の原因を定義すると…

筋や関節、軟部組織といった末梢性の問題と、神経細胞の損傷によって動員されるモーターユニットの現象、さらには慢性的な不使用による大脳皮質の萎縮といった中枢性の問題などが挙げられるが、これらは悪循環を形成して筋の過緊張を増悪させていくのである。

石井慎一郎:動作練習臨床活用講座 動作メカニズムの再獲得と統合. P15 メジカルビュー.2021

こういった問題が起こってくると、いよいよ自分では抜け出すことが難しい「負の連鎖」が起こってくる。

これをいかにして断ち切るか?が重要になってきます。

実施可能な方法として

  • ストレッチ
  • 振動刺激
  • 電気刺激
  • 運動イメージ

があります。

ストレッチ

いちばん有名な方法としてストレッチやマッサージがあります。

みなさん継続されるものの、伸ばした直後は良いけど…とよくおっしゃいます。

もちろん効果がないわけではありません。

ただ・・・

「機械などを使った数十分の持続的なストレッチで効果が認められる」ということがわかっており、セラピストが徒手で行う数分のストレッチでは十分な効果は期待できないかもしれません…。

ただ、二次障害である「筋短縮・粘弾性の低下」には、効果はあるかと思います。ただ、随意運動を促した中で現在の可動域範囲で動かすことよりも、時間をかけてストレッチを行うことにはあまり効果の期待ができないかも…?

振動刺激

振動刺激の方法として、局所振動刺激と全身振動刺激の2つがあります。

局所振動刺激

特定の筋肉に対して、80ー120Hz(1秒間に80〜120回の振動)を与える方法で筋肉の緊張が改善する可能性があるというものです。

局所振動刺激

健常者に対する研究では、80Hz程度の振動刺激を腱に与えると筋緊張が軽減し、3分程度行うとその効果は30分程度持続する可能性が示唆されています。

ただ脳卒中者に対する研究では、いまだ痙縮に対して効果ある!と言い切れるほどの検証はされていません(2。

当店でも痙縮に対しては、この局所振動刺激を併用して動かしやすい中で手足の動きの練習を行う際に用います。

また、肘関節の運動障害には効果があるとされており、肘がなかなか伸びにくいといった現象に対しても、局所振動刺激を併用してリーチ練習などを行います。

全身振動刺激

全身振動刺激(Whole body vibration)とは、振動を発生させるプラットホームの上に、患者自身が立位や半立位などの様々な姿勢で振動刺激を受けながら姿勢維持や運動を行うものであり、振動により筋紡錘とα運動ニューロンを刺激することで緊張性振動反射(Tonic vibration reflex:TVR)を促すものであるとされています。3)

成人の脳性麻痺の方に対する研究結果として

全身振動トレーニングまたはレジスタンストレーニングの8週間の介入が、脳性麻痺の成人の痙攣に悪影響を及ぼすことなく、筋力を高める可能性がある

Ahlborg L, Andersson C, Julin P. Whole-body vibration training compared with resistance training: effect on spasticity, muscle strength and motor performance in adults with cerebral palsy. J Rehabil Med. 2006 Sep;38(5):302-8. 

脳卒中片麻痺の方に対する研究結果として

WBV前後でMAS と足関節自動背屈角度、他動関節可動域、歩行能力に改善がみられた。

※MAS:筋緊張検査

宮良広大, et al. 脳卒中片麻痺下肢への全身振動刺激 (Whole body vibration) による痙縮抑制効果-誘発電位 F 波を用いた検討. 理学療法学, 2015, 42.2: 90-97.

脊髄損傷の方に対する研究結果として

ヒラメ筋のH反射が抑制された。(伸張反射の一つの指標)

Sayenko DG, Masani K, Alizadeh-Meghrazi M, Popovic MR, Craven BC. Acute effects of whole body vibration during passive standing on soleus H-reflex in subjects with and without spinal cord injury. Neurosci Lett. 2010 Sep 20;482(1):66-70.

いまだ、痙縮に対する効果として第一選択かどうかは、
はっきりとはしていませんが、5分間程度で筋緊張が抑制できることや、可動域の改善につながる可能性がありますので、検討しても良いのではないでしょうか。

電気刺激

脳卒中ガイドライン2021では痙縮に対して、経皮的末梢神経刺激(TENS)を行うことは勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)とされています。

上肢に対してのTENSの報告は少ないですが、

下肢に関しては痙縮を優位に軽減させ、静的バランス(立っている時のバランスなど)および歩行速度を改善させる、とされています。

狙う効果によっては装着する部位を検討する必要がありますが、

多くは神経に沿って設置または筋腹に設置することが良いとされています。

ただ電気を流すだけよりも、リハビリテーションと併用して実施することで効果が高いことがわかっています。

運動イメージ

最後になりますが、運動イメージも筋緊張へのアプローチで用いることがあります。

運動イメージはメンタルプラクティスと呼ばれる方法になりますが、直接的に痙縮に関係するかどうかは検討の余地がありますが。

しかし臨床上ですが、動作時の筋緊張亢進をコントロールするのに良い反応が見られることが多いです。

運動イメージ

3分程度のイメージで、筋肉がどのようの動くか?手を動かすときにどんな感覚が起こるか?の1人称筋感覚イメージを行うことで、運動前野や補足運動野が活動することがわかっています。

また、運動前野は痙縮の病態である伸張反射の回路を抑制性にコントロールするとされています。

外部からの刺激だけでは持続がしないため、いかにして内からの神経活動、随意運動を起こすか?を考えていく際には運動イメージは一つの方法として有効なのではないか?と考えています。

また筋のリラックスイメージも有効ではないか?という報告もあったりしますので、随意運動が難しい方でも、行える方法として検討の余地はあるかと思います!

まとめ

いかがでしたか?

筋緊張異常は臨床の中で多く悩まれている方がいらっしゃいます。

当店でも積極的にこの筋緊張異常には介入することで、手足の動かしさの改善を図り、生活で麻痺側が使いやすい、使いたくなる手足を目指すためのアプローチを行なっています。

最後までお読みいただきありがとうございました!

引用文献

1)根本明宜:筋緊張異常とリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med 2020;57:1069-1076

2)Caliandro P,Celletti C, Padua L,et al:Focal muscle vibration in the treatment of upper limb spasticity:a pilot randomized controlled trial in patients with chronic stroke. Arch Phys Med Rehabil .93(9):1656-61,2012.

3)Cochrane DJ, Loram ID, et al: Changes in joint angle, muscle-tendon complex length, muscle contractile tissue displacement, and modulation of EMG activity during acute Whole-body vibration. Muscle Nerve. 2009;40:420-429.

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