今回も、論文を紹介していきます!
前回はトレッドミル歩行の効果についての論文でしたが、今回は全身振動とトレッドミル歩行を組み合わせると歩行能力がより高まる、という論文をみていきます!!
最後までご覧いただければと思います!
今回の論文
慢性脳卒中患者の歩行能力の改善に、全身振動とトレッドミル トレーニング(WBV-TT) が慢性脳卒中患者の歩行能力の改善にトレッドミルトレーニング(TT) よりも効果的であることを示しています。
Choi W, Han D, Kim J, Lee S. Whole-Body Vibration Combined with Treadmill Training Improves Walking Performance in Post-Stroke Patients: A Randomized Controlled Trial. Med Sci Monit. 2017 Oct 14;23:4918-4925.
上記の論文をわかりやすく解説していきます。
対象者
対象者は、広告からのサンプル抽出により40名の参加者が登録されました。初発の脳卒中後6か月以上経過し歩行能力が0.8km/h以上で30秒以上可能、MMSE21点以上であった方でした。
除外基準は、過去6か月間同様の実験に参加した被験者、骨折、感染症、心臓ペースメーカー、前庭障害、小脳疾患、視覚および聴覚の問題、整形外科的問題による歩行障害、慢性痛、または拘縮を患っている被験者であり、被験者10名は除外された。
今回の論文は、単盲検無作為化対照試験であった。被験者30名を、全身振動とトレッドミル歩行(WBV-TT群)とトレッドミル歩行(TT群)に、無作為に割り当てられました。無作為化は、「O」または「X」とマークされた紙が入った封筒を使用して実行されました。また、検査者が各対象者がどうような介入を受けたかは知らされなかった。
両群の一般的な特徴
WBV-TT群および TT群の一般的な特徴です。性別、年齢、身長、体重、脳卒中の種類、麻痺側、麻痺期間、MMSE 点において、両群間に有意差は認められませんでした。
介入方法
トレッドミル歩行について、勾配0%・速度0.8 km/hよりスタートし、安全のために体重のないサポートハーネスを装着し、必要に応じてサポートバーを持つことが許可された。対象者は毎週の最初の日に最大歩行速度を設定し、5%ずつ増加させた。歩行時間は20分間でした。
全身振動(WBV)について・・・
全身振動について、対象者は常に目の前にあるサポートバーを軽く持ちながら実施した。運動は6種類あり、各45秒間行われ、間には1分間の休憩時間が与えられた。周波数は2週間毎に20Hzから30Hzまで5Hzずつ徐々に増加させた。運動プログラムは、1.左右体重移動(できるだけ患側への体重移動)、2.スクワット(膝関節45°屈曲)、3.前後体重移動運動(かかとの上げ下げ)、4.フォワードランジ(患側を前方に出して屈曲)、5.片足立ち(患部の脚とそうでない脚を交互に持ち上げる)、6.深いスクワット(膝関節を90°屈曲)であった。
介入期間は、WBV-TT群・TT群ともに週3日・6週間であった。
すべての対象者は介入前と介入後に、GAITRiteと6MWTを用いて歩行機能を測定した。
GAITRite (GaitRite、CIR Systems Inc.、米国、2008 年) は、速度、ケイデンス、遊脚期と立脚期の時間などの時間的パラメータと、歩幅、片肢支持率のサイクル、両肢サポートなどの空間的パラメータを評価します。対象者は、電子カーペットから 3 m 離れて立ち快適な歩行速度でカーペットの上を歩き、電子カーペットを通り過ぎて 3 m 歩いた後で停止するように指示された。筋肉疲労による偏りを最小限に抑えるために、測定は 3 分間の休憩を挟んで 3 回繰り返され、3 回の測定値の平均値より算出した。
6MWT は、対象者は1メートル間隔でマークされた棒を使って20メートルのトラックに沿って、安全かつできるだけ早く6分間歩いた後、総距離を測定した。
結果
両群の介入前後を比較した場合、時間変数において、WBV-TT群では歩行速度、ケイデンスともに有意に改善したが、TT群では歩行速度のみ有意に改善した。歩行速度の改善度は、WBV-TT群の方がTT群に比べて有意に大きかった(p<0.05)。
空間変数において、WBV-TT群では、すべての項目で有意に改善した。TT群では、影響の少ない側の歩幅と歩幅のみが有意に改善した。歩幅(患側、影響の少ない側)、歩幅、両側サポートの改善度は、WBV-TT群の方がTT群に比べて有意に大きかった(p<0.05)。
6週間の介入後、WBV-TT群はTT群と比較して、歩行能力の大幅な改善を示した。
6MWTでは、両群とも介入前に比べて有意に改善し(p<0.05)、WBV-TT群では32.95m、TT群では28.46mであった。しかし、6MWTでは2群間に有意差はなかった。
まとめ
今回の論文から、生活期脳卒中の方の歩行能力改善には、トレッドミル歩行だけでなく全身振動を加えた方がより有効であることが分かりました。また、今回の対象者も脳卒中発症後平均1年程度経過した方であり、生活期における脳卒中の方への歩行能力改善に貢献できる可能性があります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!