さて今回は若干マニアックなテーマですが、足の基本に特化した内容になっています。

といっても、足部を専門的に見ている運動器の先生方には到底及びませんし、最近になって足部疾患もみるようになったというレベルです。

ですので、ある特定の病気に関する知識は、あまり多くありません。

しかしながら、原理原則として足部の知識として神経疾患の方のリハビリに関わらせていただく中で、自分がしっておいた方が良いと思うことを皆さんに共有して行きますね。

ところでみなさんは足は好きですか?

ちょっと変な質問ですよね。私自身、PTだからということもあったり、歩行・基本動作への介入時に足部の問題に悩むことが多かったです。

例えば、内反尖足だったり、過度な回内による扁平足、足底筋膜炎だったりと脳血管疾患でもエンカウントするような症状があるんですね。

また、足部って手に次ぐ感覚の受容器としての役割があったり、立位では足部だけが唯一地面と接しているという点から、足部からの感覚情報と視覚・前庭感覚を照らし合わせて現在の自分の身体の状態を調整しているとも考えられています。

と、いうことはですね、足部の状態によって立位において、地面からの感覚情報を捉えられずバランスが姿勢制御が適切に行われない、なんてことや、

足部からの上行性運動連鎖による膝、股関節、骨盤、体幹までのKinetic chainの視点も踏まえて歩行中、立位、起立動作時の動作パターンを予測するという視点が増えたりするんです。

そう思うと足が可愛く見えてきませんか?笑

とはいえ、みなさんにあらかじめお伝えしとくことがあります。

得意な人たちと比べて、自分にはそこまで詳細に臨床の中で、「今小趾側に荷重がかかって、前足部が〜」みたいな神の目はありません。

動作分析が得意かと言われると苦手な方です。というより、普通見えないものまで見えるという人が苦手な方です。

幽霊とかその辺の超常現象と一緒だと思っている派ですからね。

ただ、母趾側、小趾側、前足部、後側部、アーチ構造、機構などを、推論の中で使っていくほどには見れているつもりです。

その視点を皆さんにお伝えして行きたいのですが、私と一緒で足はそんなに知識がないよ…

という人ももちろんいると思いますので、 ごくごく簡単に基礎知識から共有して行きます。

足の全体像

まずですね、全体的に自分が坐位・立位・歩行でチェックしている視点について共有します。

坐位・特に立位とかいったCKCの状態の際にチェックしている視点です。

  • 足のどこに圧が強いか知覚できるか、特に前後ですね。左右も分かれば良いのですが、前後ほどわかりにくい部分かなとおもいます。
  • 側方動揺しやすい場面で外側で制御できるか、例えば内反だったりがでて足関節戦略でバランス取れているか、とかですね。
  • 内反、外反位で底屈運動ができるかどうか。1つ目に繋がってくる部分ですが、小趾側、母趾側への荷重がかかっていることが認識できていて、前足部を起点としたヒールライズが下腿三頭筋でできるかどうか

これは結構大事にしている部分です。

もちろんアーチが崩れていないか、とかも大切ですがアーチが崩れていたら、外在筋が優位だったら、起こってくる現象がこの3つが代表的かな、と思っています。

ですので、ここは大事にしている部分ですね。

歩行中には、

  • 遊脚期に、足趾は能動的に伸展できているか、Crow toe、槌指と言われる状態になっていないか
  • 立脚後期から前遊脚期で受動的に足趾が伸展できているか、という視点です。ここで足部の剛性を適切に作り出して、ウィンドラス機構ですね、Push offにつなげていけているかどうかが重要です。
  • 最後の2つ目に似ていますが、足部のCOPは踵、小指、母趾へと移動できているかどうか

これは歩行中に内反しているとか外反しているか、とかアーチが崩れていないか、逆にアーチが下がっている時に上がってしまっていないか。

とかはしっかり見るようにしています。

そのために自分が学び、知っている知識についてまずは説明していきます!

足の構造物

釈迦に説法かと思いますが、

あまりしっかりと学んだことのない方もいらっしゃると思いますので、
説明していきたいと思います!

足の骨・形は

  • 足根骨
  • 関節
  • アーチ

で構成されています。

ショパール関節とリスフラン関節は結構有名どころですよね!

ご存知かと思いますが、念のために説明させていただきました!!

足の構造物の役割

足の役割を後、真ん中、前で分けて行ってみましょう。

後ろは、距骨関節が足部の内外反の制御、衝撃吸収、上行性の運動連鎖のスタート地点

真ん中は、リスフラン・ショパール関節でアーチ構造の形成や衝撃吸収、地面に対する形状の変化ですね。先ほどのスライドで提示した通りです。

最後に前はアーチ構造の形成、足趾の自他動での伸展運動を作りクリアランスの形成や足部の剛性を生成したり、前方への推進力の生成に関与すると考えています。

これらの考え方はあくまで代表的な考え方かつ、私自身が臨床の中でこうやって足を捉えているよという話です。

臨床の中では後足部の機能不全、例えば過回内足とかだった場合ですね、これらの機能が失われてしまい左右への動揺が強くなったり、衝撃吸収ができず常に内反させることによって剛性を作り出してしまうため、母趾側にCOPが移動せず、不安定な歩行になってしまっているのかもしれないな、とか考えたりするわけですね。(あくまで個人的な見方です。ご参考までに!)

アーチの構成と役割

ということですね!

言葉で説明するよりも視覚的に理解していただいた方が、絶対忘れにくいと思います!!

足の役割

足の役割について考えて行きましょう。

みなさんが思う足の役割ってなんでしょうか・・・?

また足の役割について、自分が大事やなと思っているのが、バランス、衝撃吸収、受容器、推進力の4つの役割です。

これをここからは解説していきますね!

足とバランス

バランスと言いましたが、このバランスが結構厄介なんですよね。

よく私たちは、アライメントが悪いから、筋力低いから、感覚が悪いから、痛いから、神経系が働かないからバランスが悪いんですと表現してしまいがちなんですが、

実はそれはバランス能力の話で、広義のバランスという意味合いを考えると

  • 課題
  • バランス能力
  • 環境

これらが相互に影響しあってバランスというものを決めていると考えられています。

例えば、整地されたフローリングと不整地といった環境でも異なりますし、

ある地点までタンデム歩行してね!という課題は、同じ平地歩行でもバランス戦略って異なりますよね。

また、

ある機能だけが低下しているから「バランスが低下している」と表現するのも間違いですよね。

バランス能力を見ていただくとわかるとおり、6つの要素が相互関係しあっているわけです。

ただその中でもアライメントや神経機能のバランス能力への貢献度はやはり高いものであると考えても良さそうですね!

例えば、Kinetic chainだったり運動制御に関わってくる網様体脊髄システム、前庭脊髄システムだったり、歩行中なら皮質脊髄システムによって足関節の微調整をしていたりするわけなんですから。

もう少し詳しくバランス能力を構成する機能的要素をリスト化したのがこちらです。

やはり、バランス能力というもの自体が複雑かつ、そこに課題・環境といった側面を考慮しなければらないということは…

  • バランス能力の中での機能低下を見つける
  • 環境・課題による難易度が下がった状態で訓練をし機能改善を図る
  • 徐々に環境・課題の難易度を上げていく

こういったプロセスが必要だと考えています。

例えば、静的安定性は高いが反応的姿勢調整ができず、動的安定性が低下している場合を想定します。

この反応的姿勢調整が困難、能力が低下していると定義するためには難しいところですがBestestといったバッテリーを用いていく必要がありますがここではその説明は割愛させていただきます。

例えばその場での方向転換が難しい時ですね、あとは振り返りができないことありませんか?

その時に、いきなりステッピングの練習とか振り返りの練習してませんよね・・・?

初動はどこから動くのかを知ると可動域や筋活動を見ることができたり、頸部の回旋なら右に回旋したら重心はどちらに動くのか?とかも大事な知識ですよね!

見覚えありますよね?笑

そうするとなぜ安定性が低いのか、Hip strategyが優位だからじゃないか?足底はしっかりつけているか?とか見る視点がどんどん増えていきますよね!

このレパートリーをどれだけ出すかが臨床の中で最も重要なことだと思います!!

さて少し話がそれましたが、

次に役割として「衝撃を吸収すること」について説明していきます。

足と衝撃吸収

まず足部への荷重割合について知っておきましょう!

ただあくまで理論上なので、こうでない可能性もあります!

前4、後6と覚えておきましょう!

後足部が荷重時においてとっても重要なことがわかりますよね!

ただ全ての方において、このような比率での荷重割合というわけではありません。

例えば足底腱膜が短縮している方や、アーチ構造が崩れていたら・・・考え方は変わってきますよね。

目の前の方の状況に合わせて臨機応変に基礎知識を活かしながら見ていく必要があります。

足部と衝撃吸収

衝撃吸収においてとても重要な足部の役割の中に、トラス機構があります。

歩行中であれば、Loading responseからMid stance earlyに移行するときに、立脚側下肢には体重の70%程度が急激にかかってくると言われています。

そこでとても重要なのが、股関節、膝、そして足部におけるトラス機構であると考えられています。

役割として足底腱膜の伸張によって、内側縦アーチを一時的にぐっと潰すことで、衝撃を緩和してくれるのです。

また同時に足底腱膜からの感覚入力によって、前脊髄小脳路による更なる伸展活動を高める働きもあると想定できますね。

逆にこのタイミングでトラス機構が起きず常に過回内(扁平足)だったとしたら…、立脚中期のタイミングを認識することができず、神経系による伸展活動の調整が困難となり、骨性の支持としてSwayやBackkneeが起こってくる可能性も推測できるかもしれません。

そしてもう一つ、距骨下関節も重要な役割を持っています。

足部への荷重がかかると図のように約5°距骨下関節が回内すると言われています。

距骨下関節回内により何が起こるか?



①距骨の底屈・内旋
→距骨は外果・内果(くるぶし)に挟まれているため、距骨の内旋は下腿の内旋を引き起こす
→膝関節はscrew home movementにより下腿内旋では膝屈曲をしやすい状態となる + 十字靭帯が交差し合うことで動的安定性が高まる

②距舟関節、踵立方関節の関節軸の平行化
→横足根間関節の緩みが生じる
→足部の衝撃吸収が可能 + 不整地などにおいて足部の動的な適合が起こる

とされています。

ということは、距骨下がぐらぐらだったり、逆に回外(内反足、High arch)がよくないことがわかりますね。

足部と感覚センサー

足部って手につぐ感覚センサーとしての役割がとても強い部分になります。

足底の皮膚感覚受容器の形態についてみていきましょう。

よく言われるメカノレセプターもここに含まれてきます。

特徴として

踵から足趾、内側から外側に向かって分布が増加する

とされています。

また、特に足順応、受容野がせまい受容体が多いという特徴もあり、足部は動いていく中で圧がどこにかかっているかがとても重要な感覚情報であることがここから推測されますね。

足部と姿勢制御を考えてみてもこういった特徴があるんです。

これらは全て足部自体の特徴でもありますが、足部と神経系の相関関係がこれらの役割を可能としているんです。

もう一度言いますが、足部は手に続くとても重要な感覚受容器です。

足部を神経系の側面から見ないなんてことは勿体無いですよね?というより飛車角落ちです(言いたいだけ)

そしてその感覚が主にどのような経路によって登って姿勢制御に関与するの?というのはみなさんもうご存知かと思いますが、

脊髄小脳路ですよね。そのうちでも前脊髄小脳路によって特にCPGなどのパターン運動時に大きな役割を持っていると考えられています。

そのため、足部に対して装具を適応すると、急に立位が安定する、歩行時の膝折れが減少するなんていうのはバイメカで説明ができますが、筋活動や足部よりも上の部分の姿勢制御(筋緊張調整や筋による関節運動)を行なっているのは神経系であると知っている皆さんは、バイメカモデルだけでの解釈だけでは不十分ということがお分かりかと思います。

網様体脊髄路が働かない、歩き始めの時点でpApa’sが働くことのできない脳損傷が起こっていた場合、例えバイメカモデルでこうなるはずだ!と思ってもうまくいきませんよね?

そうなるともっと、構成要素の部分練習を行い、必要な機能を再獲得して連続した動作につなげていく必要があることは想像に容易いと思います!
というのが私の回答です!ご参考になりましたら幸いです!

なぜ足関節戦略なの?なぜ股関節戦略を取ってしまうの?

足部の働きから考えていきましょう。

前足部へ荷重が乗った時には、

前に倒れそうになる。

その時にはできるだけ重心偏位がおこらないようにモニターしながら

橋網様体脊髄システムを使って下腿三頭筋や前脛骨筋の活動でコントロール

過剰に前足部にかかった場合瞬時に前庭反射と、足底感覚をすり合わせて前庭脊髄反射を引き起こしている可能性がある。

この時に過剰に前庭脊髄路だけを働かせるのではなく、橋網様体脊髄システムも共同することでヒップストラテジーでカウンターウェイトを作り出すことができるのかも知れませんね。

こういった推論をしていくためにも、神経系の知識、バイメカの知識、運動解剖学はとても重要なのだと考えています。

足部と推進力生成

最後に足部と推進力の生成についてです。

ここで重要なのが・・・、ウィンドラス機構です!

足趾の受動的な伸展により下腿三頭筋の活性化や足底腱膜の伸張により足部の剛性が上がると考えれます。

また足底腱膜が伸張することにより前述のような強い伸展活動が実現可能となったり、

「リコイル現象」という足部が伸びたらコイルを巻いてくるように収縮力に変換されるような現象も起こってくることが想定されます。

また足底腱膜の強い伸張は、筋連結をもった下腿三頭筋の活性化を実現します。

アナトミートレインからの引用ですが、解剖検体からSuperficial back lineを観察したものになりますが、足底筋膜と下腿三頭筋は一つの単位として筋連結を持っている可能性がありますよね。

つまり足底腱膜が伸張→下腿三頭筋の伸張→リコイル現象+Ia反射、Ib促通が起こる→Push offに貢献する

以前Twitterで募集したところ、カーフレイズ(踵上げ運動)はみなさんがもっとも多用する訓練なようです。

つまり下腿三頭筋への介入は大勢の方が重視しているのです。

そうすると足部への介入も、こういった筋連結の観点からはとっっっっても重要かつみておくべき場所であることが考えれますよね!

最後です。

歩行中におけるトラス、ウィンドラス機構についてまとめますが、

といった図になりますね!

ぜひこういった足部の知識、少しマニアックだしもっと大事なとこあるし・・・と思っていた方にも、

あ、足部見てみよ!

ってなってもらえるとすごく嬉しいです。