今回は脳卒中のリハビリによく使われる電気刺激について解説していきます!
家電量販店にも売られていたり、
リハビリの中で使ったことのある方も多いのではないでしょうか?
「効果があまり感じられない」といった声もよく聞きますが、実際には”高い効果が期待できます”
しかしそのためには『条件』が重要なんです。
その条件を知り、
効果的に活用していくために、
今回は種類や一般的な効果をお伝えします!
電気刺激療法の効果は?
電気刺激がどのように機能するかを理解するために、筋肉がどのように働いているのか?を簡単に説明します。
脳は化学信号と電気信号を使用して、いつ動くべきかを筋肉に伝えます。
脳・脊髄が電気を使って筋肉を刺激し、筋肉は電気に反応して収縮するという性質があります。
しかし脳卒中が発生すると、脳の損傷した部分はこれらの信号を適切に送ることができなくなります。
その結果、影響を受けた筋肉を動かすことが不可能ではないにしても、困難になることがあります。
ここで電気刺激が役に立つんですね。
電気刺激は、非侵襲性(傷づけたり、刺したりしないこと)の電極を皮膚に配置することで機能します。
これらの電極が作動すると、筋肉に穏やかな電気インパルスが送られ、筋肉が収縮します。
脳卒中患者に対する電気刺激は、感覚を筋肉や皮膚に与えることで、脳の損傷部分を活性化するのに役立つと考えられています。
次に、この刺激は、 脳が自らの配線を再構築し、脳卒中などの損傷を治癒するために使用するプロセスである神経可塑性を引き起こします。
神経可塑性により、脳の健康な領域が損傷した領域の機能を引き継ぐことができます。これは、刺激に応答して新しい神経経路を形成することによって行われます。
したがって電気刺激は追加の刺激を与えることで神経可塑性を高め、脳卒中後のリハビリによる効果を高めてくれる可能性があります。
電気刺激の種類とは?
まずは電気刺激の種類です。
電気刺激は大きく2種類に分けられます。
経皮的電気刺激
神経筋電気刺激と経皮的末梢電気刺激に分かれます。
神経筋電気刺激は、オンとオフがあるタイプで、
- 廃用
- 筋力低下の予防
- 筋力向上
- 痙縮抑制
- 神経筋再学習
に効果があるとされています。
経皮的電気刺激は、持続的に電気刺激が与えられるタイプで、
- 鎮痛効果
- 痙縮の改善
- 末梢循環の改善
などに使われることが多いです。よくある家庭用低周波はこちらのタイプになります。
機能的電気刺激
力を入れようした時に、脳から筋肉に伝わる電気信号(筋電図)を拾い、電気刺激が流れるタイプです。
- 運動障害
- 運動パフォーマンス
- 痙縮
- 歩行の改善
に効果があるとされています。
電気刺激はリハビリで使ったほうがいい?
脳卒中ガイドライン2021に記載がありますが、
と、脳卒中リハビリにも推奨されています!
電気刺激の効果は?
上肢と下肢それぞれで効果がわかっているものがあります。
それがこちらです。
上肢と下肢両方とも効果があることがわかっています。
ただ、パラメーター(設定)がとっても大事になってきます。
参考にした文献や目的によって分けていく必要があります。
ただ、設定するときにある程度の電気刺激の特徴そして強さとパラメーターによる効果・基準を覚えておくと、設定を一人一人に合わせて行うことができるようになるかと思います。
電気刺激のパラメーター
電気刺激の強度設定には特徴がありますが、これを強さー時間曲線(SD曲線)といいます。
当施設にある電気刺激は図の中ではこちらになります。
また目的に応じてある程度この表の中で、どれくらいの設定が良いかが決まっています。
(あくまで一般的な参考です)
となりますので、電気刺激を使う目的と一人ひとりの体の状態に応じて細かく設定することが重要です。
また基本的には、参考にしたRCTで介入群に行われている電気刺激のパラメーターをトレースすることが必須です。
使っては行けないケース(禁忌事項)
、電気刺激の使用には次のような注意すべき点と禁忌があることに注意することが重要です。
- ペースメーカーまたはその他の埋め込み型電気機器を装着している人は、電気刺激を決して使用しないでください。
- しびれや感覚の低下がある人は、セラピストまたは他の医療専門家の直接監督の下、細心の注意を払って電気刺激を使用する必要があります。
- 電気刺激は傷や悪性組織には決して使用しないでください。
- 妊娠中の女性およびてんかんのある方は、電気刺激を使用する前に医師に相談してください。
電気刺激を用いたプログラムを開始する前に必ず担当のセラピストに相談しましょう。
まとめ
電気刺激療法は、目的とする動きをしてくれる筋肉に流すことで、「ご自身で動かす」ためのサポートを電気が行なってくれるというものです。
重度麻痺の方から軽度の方まで幅広く用いることができます。
ただ、ビリビリ感が苦手など人によっては使うのは…という方もいらっしゃいますので、説明し同意を得た上で使っていくことになります。
また歩行中に足首が上がりにくい…という方にも、IVES+を用いることがあります。
その場合、こういった効果が期待できます。
臨床研究の内容のリハビリをベースに、IVES+などを併用することで
歩行練習の効果をより高める効果を期待できますので、当施設でもこのような場面で積極的に活用しております!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
参考文献
Chipchase LS, Schabrun SM, Hodges PW. Corticospinal excitability is dependent on the parameters of peripheral electric stimulation: a preliminary study. Arch Phys Med Rehabil. 2011 Sep;92(9):1423-30.
Hatem SM, Saussez G, Della Faille M, Prist V, Zhang X, Dispa D, Bleyenheuft Y. Rehabilitation of Motor Function after Stroke: A Multiple Systematic Review Focused on Techniques to Stimulate Upper Extremity Recovery. Front Hum Neurosci. 2016 Sep 13;10:442.
脳卒中ガイドライン2021