痙縮は脳卒中の一般的な合併症であり、脳卒中生存者のQOLに大きな影響を及ぼす後遺症の一つです。

痙縮は、筋緊張の亢進、硬直、不随意的な筋収縮を特徴とし、疼痛、不快感、運動困難の原因となります。今回は痙縮がどのような経過を辿るのかをまとめていきたいと思います。

痙縮の発生率は?

痙縮は多くの方に見られる症状ですが、脳卒中後にどれくらいの方が痙縮と呼ばれる症状が出現するのでしょうか?

脳卒中後の痙縮の発生率は、研究集団、使用する痙縮の定義、評価の時期によって異なる。疫学のレビューによると、麻痺患者における痙縮の発生率は、脳卒中後1ヵ月で27%、3ヵ月で28%、6ヵ月で23%と43%、18ヵ月で34%と報告されている。

Chih-Lin Kuo, Gwo-Chi Hu,Post-stroke Spasticity: A Review of Epidemiology, Pathophysiology, and Treatments,International Journal of Gerontology,Volume 12, Issue 4,2018

研究によっても異なりますが、

多くの場合、生活期の時点で痙縮を2人に1人が症状を呈している可能性があります。

どういった条件で痙縮というのは発現しやすくなるのか?も議論されています。それが

また、活動量が低い場合に出現しやすかったり、重度運動麻痺で出現しやすかったりなどの報告がされています。

Wissel et al., Toward an epidemiology of post-stroke spasticity.Neurology,13-19,2013.

痙縮の発生率は、重度の脳卒中患者、痙縮の既往がある患者、糖尿病や高血圧の既往がある患者で高い

Chih-Lin Kuo, Gwo-Chi Hu,Post-stroke Spasticity: A Review of Epidemiology, Pathophysiology, and Treatments,International Journal of Gerontology,Volume 12, Issue 4,2018

重度麻痺で活動が困難な場合に多くの方が痙縮を呈している可能性があることがわかります。

痙縮は半年以降も悪化するのか?

痙縮が悪化するのか?ということに悩まれている方が非常に多い印象です。

実際に動かない状態、動かせない状態が続くと、筋肉がこわばったり、さらに動かすのが難しくなるといったことも起こってきます。

そうすると「もしかしたら痙縮が進行したのかもしれない?」と思う方も少なくないかもしれません。

痙縮のピークに関しての報告として、

脳卒中後の痙縮は発症後1~3ヵ月でピークに達するという研究結果もある

Bavikatte G, Subramanian G, Ashford S, Allison R, Hicklin D. Early Identification, Intervention and Management of Post-stroke Spasticity: Expert Consensus Recommendations. J Cent Nerv Syst Dis. 2021 Sep 20;13:11795735211036576.
Chih-Lin Kuo, Gwo-Chi Hu,Post-stroke Spasticity: A Review of Epidemiology, Pathophysiology, and Treatments,International Journal of Gerontology,Volume 12, Issue 4,2018

しかし、

一部の研究では、痙縮は脳卒中後3ヵ月を超えても持続する可能性があり、脳卒中後6~12ヵ月に発症または悪化する患者も4~13%いることが分かっている

Early prediction of long-term upper limb spasticity after strokePart of the SALGOT study Arve Opheim, Anna Danielsson, Margit Alt Murphy, Hanna C. Persson, Katharina Stibrant Sunnerhagen Neurology Sep 2015, 85 (10) 873-880

そのためはっきりと進行しない、とも言い切れないのが現状となっております。

そして

ある研究によると、脳卒中後3ヶ月の時点で軽度の痙縮がある患者は、時間の経過とともに悪化する可能性が低かったが、中等度の痙縮がある患者の半数近くは重度の痙縮に進行し、重度の痙縮がある患者は安定したままであった。

Zeng H, Chen J, Guo Y, Tan S. Prevalence and Risk Factors for Spasticity After Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Neurol. 2021 Jan 20;11:616097.

といった研究での報告もあり、

可能な限り運動機能やパフォーマンスを高めていくためのリハビリによる機能向上が痙縮の進行を予防するために重要なのではないか、と考えられます。

痙縮はなぜ起こるのか?


脳卒中後の痙縮の病態生理学は複雑で、中枢神経系、末梢神経系、筋組織の変化を含む複数の要因が関与している。

痙縮は、脊髄のα運動ニューロンへの興奮性入力と抑制性入力の不均衡から生じると考えられており、これにより筋緊張が亢進し、筋肉がこわばります。
この不均衡の根底にある正確なメカニズムは完全に解明されておらず、皮質脊髄路、脊髄反射、筋の特性の変化が関与していると考えられている。

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脳卒中後の運動回復と神経可塑性


痙縮と運動回復は、どちらも脳卒中後の神経可塑性に関連している。神経可塑性とは、傷害や環境の変化に応じて再編成し適応する脳の能力のことである。痙縮は運動回復の過程における重要な要素であり、回復が進むにつれて出現したり消失したりすると考えれています。

運動回復が停滞または停止している慢性脳卒中では、痙縮は通常、異常運動と運動制御障害の相乗的パターンにつながるともされています。

まとめ

痙縮は脳卒中の一般的な合併症であり、脳卒中後のQOLに大きな影響を与える症状です。

脳卒中後の痙縮の発生率は、研究対象、痙縮の定義、評価の時期によって異なるとされており、

脳卒中後の痙縮の病態生理学は複雑で、中枢神経系、末梢神経系、筋組織の変化を含む複数の要因が関与している。

痙縮と運動回復は、どちらも脳卒中後の神経可塑性に関連している可能性があり、

積極的なリハビリテーションによって、症状が改善する可能性があります。

電気刺激療法や、振動刺激療法、装具療法、持続的なストレッチなどが効果的であるとされていますが、一人一人の症状によって効果は異なってきます。

担当のセラピストさんや相談を受けている自費リハビリなどに積極的にご相談いただくことで、

手足のこわばりによる動かしにくさ、歩きにくさなどの解決策が見つかることもあります。

ぜひ相談してみてください!

最後まで読んでいただきありがとうございました!