今回も論文を紹介していきたいと思います。脳卒中後の方がトレッドミル歩行トレーニングが歩行速度改善に効果がある論文を以前お伝えしました。今回は、課題指向型トレッドミル歩行トレーニングが歩行能力にどのように影響を及ぼすか、という論文があったので紹介していきたいと思います。

論文

Kwon OH, Woo Y, Lee JS, Kim KH. Effects of task-oriented treadmill-walking training on walking ability of stoke patients. Top Stroke Rehabil. 2015 Dec;22(6):444-52.

研究の背景

脳卒中患者の歩行能力の向上はリハビリテーションにおいて重要です。トレッドミルトレーニングは、通常、脳卒中患者の歩行速度の改善に効果あるとされています。また、後方歩行はバランス能力および歩行能力の向上に効果がある、体重負荷トレッドミルトレーニングにおいては持久力・バランス・QOLが改善したという研究もあります。今回の研究は、脳卒中患者の歩行能力に対する課題指向型トレッドミル歩行訓練(TOTWT)の効果を検討しました。

方法

  • 参加者: 脳卒中患者40人がランダムに2つのグループ(TOTWT群とCTWT群)に分けられました。
  • TOTWT群: 課題指向型トレッドミル歩行訓練(TOTWT)では、前向き・後ろ向き歩行、異なる速度(1.2km/hから1.5km/h)、傾斜(0度から5度)、体重支持(20%から40%)の変化が含まれます。各タスクは4分間行われ、その後に1分間の休憩があります。
  • CTWT群: 従来型のトレッドミル歩行訓練を受けました。
  • トレーニング期間: 8週間、週5日、1日30分。
  • 評価方法: ストライド長、ケイデンス、歩行速度の歩行パラメータを測定。

表1: 参加者の一般的な特性(N=40)

項目課題指向型トレッドミル歩行訓練(TOTWT)群 (n=20)従来型トレッドミル歩行訓練(CTWT)群 (n=20)
年齢(年)50.70±15.1647.15±18.65
身長 (cm)167.65±7.56164.95±8.06
体重 (kg)62.70±8.7562.20±12.07
発症からの期間(月)14.25±6.2715±6.54
MMSE27.60±1.7927.75±1.80
男性:女性14:612:8
機能的歩行カテゴリ (FAC) 415 (75%)13(65%)
機能的歩行カテゴリ (FAC) 55 (25.0%)7(35%)

結果

表2: 2つのグループの歩行特性の比較(N=40)

変数時点TOTWT群CTWT群P値
ストライド長 (cm)0週67.21±20.1666.74±23.13
4週87.64±19.9478.61±22.000.004
8週106.85±23.5389.89±22.300.008
ケイデンス (歩/秒)0週0.51±0.090.51±0.09
4週0.68±0.130.60±0.110.018
8週0.78±0.090.65±0.080.033
平均速度 (m/秒)0週0.60±0.220.60±0.15
4週0.78±0.250.69±0.180.008
8週1.00±0.270.83±0.190.007
  • OTWT群の歩行特性の変化: TOTWT群の被験者は、訓練後の4週間と8週間で、歩行のストライド長、歩行周期、ケイデンス、平均速度が著しく向上しました。
  • CTWT群の歩行特性の変化: 従来型トレッドミル歩行訓練(CTWT)を受けた群も改善が見られましたが、TOTWT群と比較して、改善の度合いは劣っていました
  • 比較: TOTWT群とCTWT群の間で、歩行特性の改善に統計的に有意な差が確認されました

結論

この研究は、課題指向型トレッドミル歩行訓練が、脳卒中患者の歩行能力の改善において、従来型のトレッドミル歩行訓練よりも効果的であることを示しており、有効なアプローチである可能性があります。これは、脳卒中リハビリテーションのための新しい訓練方法としての価値を示唆しています。

まとめ

課題指向型トレッドミル歩行訓練が、脳卒中患者の歩行能力の改善において、効果的であることが分かりました。課題の難易度の設定については、個々の身体・歩行能力に応じた選択が必要となると思われます。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!