脳卒中後の筋緊張異常の一つ「痙縮」に関してですが、
アプローチ方法には
- 物理療法(電気刺激療法)
- ストレッチ
- 局所振動刺激
- 運動療法
などさまざまなものがあります。
筋緊張亢進に対するスタンダードな介入に関してはこちら!
今回は、物理療法の一つ「超音波療法」が脳卒中後の筋緊張異常に対してどんな効果があるか?を解説していきます。
超音波療法の効果って何?
病院やクリニックで置いてある施設もあるかと思いますが、
使われていないといったお声をよく聞きます。
まずは超音波療法に関しての効果から…
- 血行促進:
超音波療法は血管の拡張や血流の促進を引き起こすため、筋肉や周辺組織への血液循環が改善されます。これにより、酸素や栄養素の供給が増え、痙縮による組織の代謝異常が改善される可能性があります。 - 筋肉の柔軟性向上:
超音波の振動は筋肉や軟部組織に作用し、筋肉の伸展性や柔軟性を向上させます。これにより、痙縮が引き起こす筋肉の異常な収縮が軽減され、関節の可動域が改善することが期待されます。 - 疼痛の軽減:
超音波療法は疼痛を軽減する効果があります。痙縮による筋肉の異常な収縮はしばしば疼痛を引き起こすため、超音波の振動が筋肉の緊張や痙縮を和らげ、疼痛の軽減に寄与する可能性があります。 - 組織修復の促進:
超音波療法は組織修復を促進する効果があります。振動が細胞内の代謝活性を増加させ、組織再生や再生能力の向上をサポートします。これにより、痙縮によって損傷した組織の修復や再生が促進される可能性があります。 - 炎症の軽減:
超音波療法は炎症の軽減にも効果があります。超音波の振動が炎症反応を抑制し、浮腫や炎症部位の鎮静化を促すことで、痙縮に伴う炎症や腫れを軽減する可能性があります。
といった効果があります。
脳卒中後の筋緊張異常には効果がある?
脳卒中後遺症患者の痙縮に対する超音波療法の有効性は、今現在(2023年6月)ではまちまちです。
ある研究では、
脳卒中患者の足関節底屈筋痙縮を、5週間にわたって10分間の連続超音波療法を15回行った結果、有意に減少させることができた(周波数1MHz、強度1,5W/cm2)。
Ansari NN, Naghdi S, Bagheri H, Ghassabi H. Therapeutic ultrasound in the treatment of ankle plantarflexor spasticity in a unilateral stroke population: a randomized, single-blind, placebo-controlled trial. Electromyogr Clin Neurophysiol. 2007 May-Jun;47(3):137-43. (B)
脳卒中患者のふくらはぎ筋肉の痙縮に対する超音波治療の効果を調査したところ、バランスと歩行の改善が見られた
CHOI, Yun-Ho; PARK, Young-Han; PARK, Sang-Hyuck. Effects of ultrasound therapy on balance and gait in stroke patients with gastrocnemius muscle spasticity. World Journal of Research and Review, 2018, 7.2: 262594.
といった報告があるが、
超音波療法後の痙縮の有意な減少は認められなかった。
Ansari NN, Adelmanesh F, Naghdi S, Tabtabaei A. The effect of physiotherapeutic ultrasound on muscle spasticity in patients with hemiplegia: a pilot study. Electromyogr Clin Neurophysiol. 2006 Jul-Aug;46(4):247-52. PMID: 16929632.
といった報告もあり、脳卒中後遺症患者の痙縮に対する超音波療法の効果はまちまちである。
超音波療法が痙縮を軽減し、歩行や機能を改善する可能性を示唆する研究もあれば、超音波療法後の痙縮の有意な減少を示さなかった研究もある。
脳卒中後遺症の痙縮に対する超音波療法の有効性を明らかにするためには、さらなる研究が必要だと考えられます。
痙縮に対するアプローチ…電気刺激療法vs超音波療法vsパラフィン(温熱療法の一つ)
脳卒中後の上肢痙縮における理学療法の効率性: TENSと超音波とパラフィンの比較
Roman N, Miclaus RS, Necula R, Dumistracel A, Cheregi C, Grigorescu OD. Physiotherapy Efficiency in Post-stroke Upper Extremity Spasticity: TENS vs. Ultrasound vs. Paraffin. In Vivo. 2023 Mar-Apr;37(2):916-923. doi: 10.21873/invivo.13163. PMID: 36881086; PMCID: PMC10026645.
今回は、こちらの報告から電気刺激療法(TENS)と超音波療法はどちらが痙縮に効果が高いのか…?を考えていきたいと思います。
結論ですが、この研究によると、脳卒中後の痙縮に対する電気刺激療法と超音波療法の有効性を直接比較することはできませんでした。
しかし、各療法の調査結果をまとめると以下のようになります
もう少し詳しく見ていきましょう!
電気刺激療法
TENSとFESは、痙縮を軽減することが示唆されている電気刺激療法です。
痙縮を起こしている筋肉は筋力が低下している
白谷智子. 痙縮筋の筋力強化. バイオメカニズム学会誌, 2018, 42.4: 225-230.
といった報告もあり電気刺激を用いていくことも有効かと考えられます。
NMES(神経筋電気刺激療法)は筋力を増加させることができる
庄本康治. 物理療法のグローバルスタンダードの理解と展開. 理学療法学, 2013, 40.8: 583-588.
ため、痙縮筋に対してアプローチが効果的であると考えられる。
超音波療法
Choi et al.らによると、
補助治療として使用される超音波療法が、脳卒中後の患者の痙縮を軽減し、歩行や機能を改善する可能性を示唆した
CHOI, Yun-Ho; PARK, Young-Han; PARK, Sang-Hyuck. Effects of ultrasound therapy on balance and gait in stroke patients with gastrocnemius muscle spasticity. World Journal of Research and Review, 2018, 7.2: 262594.
とされており、メインのリハビリ内容ではなく補助的な要素として活躍する可能性があります。
また、前述したように、
脳卒中患者の足関節底屈筋の痙性が、5週間にわたって10分間の連続超音波療法を15回行った後、有意に減少したことが報告されている。
まとめ
まとめると、電気刺激療法と超音波療法の両方が脳卒中後の患者の痙縮を軽減することが示唆されています。
脳卒中後の痙縮に対する超音波療法は、これだけ!というわけではなくリハビリテーションの補助的なものとして使用することが好ましいと考えています!
また痙縮に対する超音波療法は、以下のようなリハビリテーションの目的をサポートしてくれるものになります。(例ですが)
- 運動制御の改善: 脳卒中によって損傷を受けた脳や神経組織のリハビリテーションでは、運動制御の改善が重要です。超音波療法は筋肉の柔軟性を向上させるため、痙縮による筋肉の制御不能な収縮を軽減し、正常な運動パターンの再学習を支援する助けとなる可能性があります。
- 可動域の改善: 超音波療法は関節の可動域を改善する効果があります。痙縮によって制限された関節の動きを拡大させることで、リハビリテーションの範囲を広げることができます。超音波療法は筋肉や軟部組織の柔軟性を向上させるため、関節の可動域を増やすことに寄与します。
- 疼痛管理: 痙縮による疼痛はリハビリテーションの妨げとなることがあります。超音波療法は痛みを軽減する効果があり、リハビリテーションプログラムに対する耐久性や忍耐力を高め、効果を向上させる可能性があリマス。
- 筋力の増加: 超音波療法は筋肉の柔軟性を改善するだけでなく、筋力の増加にも寄与することが報告されています。痙縮によって筋力低下が生じる場合、超音波療法が筋肉の本来の働きを引き出して、副次的な効果として筋力の回復や向上に寄与する可能性があります。(超音波療法の2次的な効果で誰にでも起こるわけではありません。)
しかし、これらの治療法の有効性は、個別性があって、一人一人の痙縮のタイプによって異なる可能性があります。
脳卒中後の痙縮に対する最も効果的な治療法を決定するためには、さらなる研究が必要なのが現時点の限界点です!
当店では、ストレッチや電気刺激療法に併用して、
超音波療法
やラジオ波(温熱療法)、ハイボルテージ(高電圧療法)
を併用することもあります。
一人一人に合わせたオーダーメイドの施術を提案、実施させていただき、
あなたの「なりたい」をもう一度叶えるお手伝いをさせていただきます!
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最後までありがとうございました!