脳卒中後のバランス障害に対して立ち上がり練習は有効なトレーニングの一つです。

しかし、バランス障害のある患者に対する立ち上がり練習を行う際には、注意が必要です。

立ち上がり練習!のために知っておくべきこと

  1. 安全性を最優先に: バランス障害のある患者は転倒のリスクが高いため、立ち上がり練習を行う際には安全性を最優先に考える必要があります。必要に応じて介助者や適切な手すりなど支援具を使用し、安全を確保しましょう。
  2. 適切な姿勢の確保: 立ち上がり練習では、正しい姿勢を維持することが重要です。適切な姿勢で立ち上がることで、バランスの取りやすさが向上します。背筋を伸ばし、体重を均等に分散することを意識しましょう。
  3. 段階的な進行: 立ち上がり練習を行う際には、段階的な進行が大切です。最初は座面を高くしてベッドや椅子からの立ち上がりを練習し、徐々に低くしたり、手すりを無くすなど難易度を上げていくことで個々の能力に合わせたトレーニングを提供します。
  4. 筋力 バランスを改善するためには、下肢の筋力も重要です。
    立ち上がり練習に合わせて、筋力トレーニングの要素を取り入れることで、バランスの向上を促進できます。
  5. 視覚情報の利用:鏡などを使って視覚情報を活用することはバランスをの改善につながることがあります。立ち上がり練習の際には、患者が自身の位置や動きを確認しやすい環境を整えることが役立ちます。
  6. 継続的な評価と調整: 進捗状況を定期的に評価し、トレーニングのプログラムを適宜調整することが重要です。患者の状態に合わせてアプローチを変えることで、効果的なトレーニングを提供できます。

バランス障害に対して、立ち上がり練習は日常生活の質を向上させるための重要なステップです。
リハビリテーションの専門家と連携して、安全で効果的なトレーニングプログラムを組むことが大切です。

バランス障害の改善に有効な立ち上がりを紹介

バランス障害の改善のために立ち上がりが有効だということは先ほど述べましたが、
さらに効果を高めるための立ち上がり練習について一つ紹介をします。

それが足を半歩引いた立ち上がりです。

足を引いた立ち上がりに関する研究は多く、

足をより後方の位置に置くと動作時間が短くなる

SHEPHERD, R. B.; KOH, H. P. Some biomechanical consequences of varying foot placement in sit-to-stand in young women. Journal of Rehabilitation Medicine, 1996, 28.2: 79-88.

足をより後方に配置することで、起立動作に使用できる股関節の最大平均伸展モーメントが低くなる (148.8 Nm 対 32.7 Nm)。

Kawagoe, Shoichi, Naoya Tajima, and Etsuo Chosa. “Biomechanical analysis of effects of foot placement with varying chair height on the motion of standing up.” Journal of Orthopaedic Science 5.2 (2000): 124-133.

といった形で起立動作時に足を下げることは起立動作を容易にする可能性もあります。

脳卒中後に半歩引いた立ち上がりって効果あるの?

脳卒中後の方に対するリハビリとして、麻痺した足を半歩下げるという取り組みが行われることがありますが、効果はあるのでしょうか?

起立動作中の非対称な足の位置は、脳卒中患者の静的および動的姿勢バランスを改善するための優れた介入です。特にステップを利用して足の位置を変えることは起立動作のパフォーマンス向上に効果的Han J, Kim Y,

Kim K. Effects of foot position of the nonparetic side during sit-to-stand training on postural balance in patients with stroke. J Phys Ther Sci. 2015 Aug;27(8):2625-7. 

こんな報告があります。

アウトカムとして標準的に活用されやすいBBSを使った研究を紹介します。

半歩足を下げた起立訓練を行なった慢性脳卒中患者グループは、通常の起立訓練と比較して3分間の立ち上がり回数、TUG、BBSのスコアが大きく向上した。

Farqalit R et al,Effect of foot position during sit-to-stand training on balance and upright moblity in patients with chronic stroke.Hong Kong Physiotherapy Journal.2013;31

内容が立ち上がり動作を1日あたり100 回、週5日、4週間行うことを目標に個別にトレーニングされました。

使用した椅子の初期高さは、下肢長の110%(下腿長40cmなら44cmの椅子)段階的な抵抗トレーニング効果を提供するために、参加者の複数回の立ち上がりの反復を実行する能力が向上するにつれて、4週間にわたって椅子の高さ(90%まで)を段階的に下げるという方法で行われました。

加えて、

トレーニンググループは、ストレッチ運動、下肢と上肢の強化、バランストレーニング、歩行トレーニングなどの監視付き運動プログラムも週5日、4週間行います。

その結果がこちら。

隣、足を引いた立ち上がりを行ったグループでバランスの改善が優位に認められました。

もちろん、足を引かない方法で立ち上がり練習を行った方もバランスの改善は認められております。

まとめ

バランス障害に立ち上がり練習が有効な可能性があることがお分かりいただけたかと思います!

立ち上がり練習は非常に行いやすい練習になりますが、最初に述べたように「転倒予防」を十分にした中で行うことが大事です!

こういった情報をもとに担当のセラピストの方に相談して、自分にとって適切なリハビリが行っていただければ嬉しく思います!