脳梗塞リハビリスタジオActiveの戀田です!
今回はよくご質問いただく1つのテーマについて解説していきます。
【質問】
重度感覚障害によって随意性がみられなくなることはあるのでしょうか。
上記の質問に対して、
自分の知見を踏まえて解説していきます!
結論
いきなり結論ですが、
「純粋な感覚障害に伴って随意運動が行えないということは考えにくい」です。
その根拠となるのが、こちらのタッチという書籍からの引用です。
興味ある方は、ぜひ書籍をご購入ください!めちゃめちゃ面白いですよ(結構難しい)
主に運動に使われる感覚が固有感覚になってくるかと思います。
また感覚神経障害を呈した方に見られた症状を調べたものとして
最も一般的な初期症状は、感覚鈍麻、知覚異常、運動失調、および痛みでした。
Bolognini N, Russo C, Edwards DJ. The sensory side of post-stroke motor rehabilitation. Restor Neurol Neurosci. 2016 Apr 11;34(4):571-86.
感覚神経障害は、特に全身性反射低下と偽性アテトーゼの患者に重度の障害を引き起こしました。
とあります。
ここでのポイントとなってくるのは、感覚の経路と運動の経路は異なるという点にあるだと思います。
一般的に随意運動が行えない状態は、皮質からの指令(随意)がα運動神経細胞を発火させ、錐外筋を収縮させることができないことだと考えられます。
そのため、皮質脊髄路ー末梢神経ー効果器の経路が損傷しない限りは、全く随意運動自体が行えないということは考えにくいのかもしれません。
感覚障害が運動に及ぼす影響
感覚障害と運動機能との関係についてまとめたのが、
こちらのスライド
感覚障害による運動への影響を羅列したものになります。
感覚障害によって運動に影響を及ぼすことは、おそらく間違いないことなのだと思います。
なぜなら、
自発的な機能運動は、中枢神経系の準備、実行、および監視機能を必要とします。準備と実行には運動系の関与が必要ですが、モニタリングには感覚系の関与が必要
Perruchoud D, Murray MM, Lefebvre J, Ionta S. Focal dystonia and the Sensory-Motor Integrative Loop for Enacting (SMILE). Front Hum Neurosci. 2014 Jun 20;8:458.
であるとされています。
また単一症例の報告ですが、
皮質脊髄路の障害は全く見られないが、感覚障害があった症例が脳内においても大脳運動感覚ネットワークの機能不全が認められたとの報告です。
運動制御の喪失は、脳の感覚運動ネットワークの機能不全によって固有受容感覚がひどく損なわれている場合、正常な皮質脊髄路でも発生する可能性がある
Kato H, Izumiyama M. Impaired motor control due to proprioceptive sensory loss in a patient with cerebral infarction localized to the postcentral gyrus. J Rehabil Med. 2015 Feb;47(2):187-90.
すなわち運動自体には運動系のシステムが関与してきますが、モニタリングと細かな運動制御には感覚系によるモニタリングが必要だからです。
では感覚障害によって実際には運動においてどんな影響が出てくるのかをまとめたのがこちらのスライドです。
結果として感覚を用いる際の再重み付け(Re -weight)が難しくなるだけでなく、硬めるようなパターンが恒常化していってしまい姿勢制御や課題や環境に対する適応性が低下するといった悪循環に陥ってきます。
しかしながら感覚障害と運動麻痺のどちらが歩行能力に影響を及ぼすのかについてを調べていきますと、
と言った報告をいくつか見かけるため、
やはり運動麻痺の方が歩行能力への影響が大きいのかもしれません。
しかしながら運動麻痺の回復といった側面に関しては、感覚障害というのは多大な影響を及ぼすことが報告されています。
感覚障害があると運動麻痺の回復が遅れる?
運動麻痺に対する感覚入力トレーニングが運動機能を改善させることが以前から言われていますし、実際に高次運動野が損傷がしていた場合に、自発運動が乏しくなるケースにおいては感覚入力をトリガーとして一次運動野を活性化させることができるのでは?といった介入することもあります。
感覚信号は、外部環境情報と固有の生理学的状態を入力することによって、また運動系の開始を導くことによって、運動機能に影響を与えます。
Chen X, Liu F, Yan Z, Cheng S, Liu X, Li H, Li Z. Therapeutic effects of sensory input training on motor function rehabilitation after stroke. Medicine (Baltimore). 2018 Nov;97(48):e13387.
また、
運動機能の回復には感覚障害の度合いが影響してくるのでは?ということも示唆されています。
運動皮質が損傷すると、脳は、感覚運動変換に関与する二次運動野、一次感覚皮質、および高次連合野の動員を通じて、感覚運動相互作用を再マッピングすることによって運動制御を維持しようとします
Ward NS, Cohen LG. Mechanisms underlying recovery of motor function after stroke. Arch Neurol. 2004 Dec;61(12):1844-8.
※どんなプロセスで再マッピングから運動制御を維持しようとするのかが記載されていますので一度目を通すと面白いですよ!
すなわち運動麻痺そのものに対して影響を及ぼすというよりも、目的を達成するための動作・行為において感覚システムというのは、運動制御といった場面において非常に重要な役割を担っていることが考えれます。
まとめ
結論の内容について解説してきましたが、
感覚障害によって、随意運動が行えなくなるといったことは考えにくいというのが見解です。
しかしながら、感覚障害によって麻痺側大脳のM1におけるマッピングの狭小化、認知機能への影響、半側空間無視の助長、半球間抑制の不均衡などによって、運動プログラムの問題などにより、思ったような随意運動を行うことが難しくなるといった経過による影響はあるのかもしれません。
また脳内でどこを動かしているのか、どこを動かすのか?のイメージはとても重要です。
例えば足が痺れたら足が重たく感じる、また足が動かない!という経験はありませんか?
「絶対はない」のであくまで可能性として、推測の域は出ませんが運動が行えなくなってしまいきごちない、随意運動が起こせないなど症状が見られることもあるのかも?と思ったりします。
最後まで読んでいただきありがとうございました!