脳卒中リハビリテーションの現場で、

「脳卒中回復プラトー説」を聞いたことはありますか?

さまざまな言葉が飛び交いますが、その中で耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

脳卒中リハビリの初期段階では、多くの場合、急速な機能回復が起こります。

しかし、数か月後には進歩が遅くなったり停滞したりすることがあり、体の変化の進行が遅くなることを停滞期(プラトー)と呼ばれています。

プラトーは多くの方が実際に経験する一般的な段階です。

最も回復した時期と比較して数ヶ月経つことで、当初よりも大きな改善度合いが感じられないことも一つの要因かもしれません。

しかしプラトーは脳卒中後の身体機能が改善する時期が終わったことを意味するものでは決してありません。

脳卒中後のプラトーについて理解することで、脳卒中後のリハビリのモチベーションにつながると考えています。

脳卒中後のプラトー(停滞期)って何?

プラトーとは、急速に進行した期間(急性期から回復期初期・中期)の後に、機能がほとんど、またはまったく向上しない期間のことです。

この停滞期はイライラさせられ、当初のリハビリを行った先にある目標に向かってこれ以上、進めないように感じることがあります。

最も一般的には、脳卒中回復の停滞期は脳卒中後約 3 ~ 6 か月で発生します。

プラトー期間中、腕の動きが以前ほど変化がない、または歩行の進歩が止まっているように見えることに気がつき、リハビリに焦ることがあります。

以前は、脳卒中後には停滞期に達するとこれ以上の改善は認められない、というのが一般的な認識で、
6ヶ月後には機能の改善がもはや得られないとして、個別の集中的なリハビリから、現状維持を目指すことにシフトし、介護保険制度を使った地域の集団リハビリに移行していきます。

最近の研究により、プラトーはずっと続くことはないことがわかってきて、これが一般的な常識ではないことがわかっています。

脳卒中後のプラトーの原因

脳卒中後、脳は損傷から回復するにつれて可塑性が高まった状態に入ります。これは、脳が自らを再構成し、失われた機能を回復しやすくなることを意味します。 

脳卒中後には、脳は変化しないと以前はいわれていました。

しかし、近年では脳細胞は自然には再生しないものの、機能が改善することが知られています。これが脳の可塑性と呼ばれるものです。脳のその領域で失われた機能を他の代償的な領域にコネクティングすることで生じるのだと考えられています。

しかし残念ながら、この可塑性が高まった状態は永遠に続くことはなく、最終的には遅くなります。

脳の神経可塑性が遅くなると、身体の進歩も遅くなります。

この可塑性の低下と進行の遅れが、脳卒中の回復プラトーの一因となります。

ただし、神経可塑性は低いレベルではあるものの、依然として存在します
これは、まだ前進することはできますが、より多くの作業と時間がかかる可能性があることを意味します。

慢性期脳卒中リハビリの特徴

6ヶ月以上経過した時期のことを”慢性期”と呼びます。

では慢性期にはプラトーとなってしまうため、身体機能の改善は難しいのでしょうか?

その答えはNoです。

しかし、何もしなくても自然に回復していく可能性は6ヶ月未満と比較しても低くなります。

そこで重要なのがリハビリです。

このリハビリには何をするか?だけでなく「どれくらいやるか?(頻度)」が重要となってきます。

例えば、上肢リハビリで有名なミラーセラピーの場合、週5回45分のミラーセラピー+45分の理学療法・作業療法を行うことで重度運動麻痺の方でも運動機能やパフォーマンスが改善するといった報告があります。
Arya KN, Pandian S, Kumar D, Puri V. Task-Based Mirror Therapy Augmenting Motor Recovery in Poststroke Hemiparesis: A Randomized Controlled Trial. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2015 Aug;24(8):1738-48.

リハビリの例

慢性期には自然回復の要素が少なくなる以上、頻度を上げたリハビリが重要となってきます。

ここで非常に難しいのが、日本の医療・介護制度上、退院後には週に最大3日間までしかセラピストによるリハビリを受けることが難しい、というところです。

多くの場合、週に5回程度のリハビリを行うことで改善が期待できるのに対して、週に3回の介護保険だけでは身体機能・運動機能の改善が見られないことがあります。

そこで近年、自費リハビリというものがどこの県にもある、といった状況になってきました。

脳卒中の回復プラトーを克服する

脳卒中からの回復の停滞期は回復過程の一般的な側面ですが、機能改善の遅れが見られるため、これは当事者の方は思う様に行かずに、辛い思いをされる可能性があります。

しかし、この進行の停滞はおそらく一時的なものであり、 脳卒中から数十年経っても生存者は機能を回復し続ける可能性があることを私たちセラピストは知っています。

回復の停滞期を乗り越えるのは難しいですが、不可能ではありません。

新しい趣味を見つけたり、一緒に頑張るセラピストや仲間を見つけたり、運動習慣に多様性を加えたりすることは、すべてリハビリによる効果を促進するための素晴らしい方法です。

最も重要なことは、諦め図にリハビリを一貫して続けることが、目標に向かって確実に前進し続けるための最良の方法です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。