歩けない原因を考えていく上で、欠かせない能力として、「バランス障害」
があります。
「BBS:Berg Balance Scale」という56点満点でバランス能力をチェックする検査でどれくらいの能力があるのか?をチェックすることができるのですが、
歩けない多くの方はBBSのスコアが低い、といった傾向があります。
そこでやるべきことは、BBSを参考にバランス能力の底上げをする、ということになりますがその時にどんなリハビリを行えば良いのでしょうか?
※もちろんBBSだけで判断するのは難しいため、FMAやBESTestなどの評価を合わせて行うことをお勧めします。
立ち上がり動作の効果
皆さん立ち上がり練習ってしますか?
私自身リハビリの場面では非常によく活用します。
目的があって行うのですが、その一つがバランスの向上です。
今回は、立ち上がり練習を通して、より効果的にバランスを向上させるためにはどうしたら良いのか?というテーマで解説していきます!
Standing Practice In Rehabilitation Early after Stroke (SPIRES)という研究を知っていますか?
この研究はランダム化比較試験で、重度の脳卒中を患った人々にとって、脳卒中後早期に立ち上がることは重要な優先事項であると認識されているものの、長時間受動的な立位を試みた試験では、機能の改善は示されていないという背景のもと
逆に、座ったり立ったりを繰り返すなどのタスク固有のトレーニングは、機能的にプラスの効果があることが実証されています。この実現可能性試験は、長時間の立位トレーニングと課題別の筋力トレーニングを組み合わせたもので、理学療法介入においてこの組み合わせが重度の脳卒中患者に対して実現可能かどうか、また試験実施の全体的な実現可能性を判断することを目的とされた研究です。
結果として、重度の脳卒中患者にとって、脳卒中後早期に立ち上がることが重要な優先事項であることが確認された。
重要なのが長時間のただ立たされる、という起立は意味がないということです。(機能的な改善は確認されていない)
逆に、座位から立位を繰り返すような課題特異的なトレーニングは、バランス機能に好ましい効果があることが実証されています。
ではより効果的に行うための起立動作練習についてここから解説していきます。
足を一歩引いた立ち上がり練習
足を引いた立ち上がりに関する研究は多く、
足をより後方の位置に置くと動作時間が短くなる
SHEPHERD, R. B.; KOH, H. P. Some biomechanical consequences of varying foot placement in sit-to-stand in young women. Journal of Rehabilitation Medicine, 1996, 28.2: 79-88.
や
足をより後方に配置することで、起立動作に使用できる股関節の最大平均伸展モーメントが低くなる (148.8 Nm 対 32.7 Nm)。
Kawagoe, Shoichi, Naoya Tajima, and Etsuo Chosa. “Biomechanical analysis of effects of foot placement with varying chair height on the motion of standing up.” Journal of Orthopaedic Science 5.2 (2000): 124-133.
といった形で起立動作時に足を下げることは起立動作を容易にする可能性があります。
脳卒中後の方に対するリハビリとして、麻痺した足を半歩下げるという取り組みが行われることがありますが、効果はあるのでしょうか?
起立動作中の非対称な足の位置は、脳卒中患者の静的および動的姿勢バランスを改善するための優れた介入です。特にステップを利用して足の位置を変えることは起立動作のパフォーマンス向上に効果的
Han J, Kim Y, Kim K. Effects of foot position of the nonparetic side during sit-to-stand training on postural balance in patients with stroke. J Phys Ther Sci. 2015 Aug;27(8):2625-7.
こんな報告があります。
ただこの研究ではアウトカムが特殊な方法が一つと、FRT、TUGの項目では機能的安定性限界と筋の機能、予測的姿勢制御、動的安定性とSibley,2015のシステム理論の4/9項目だけの検査となってしまいます。
検査項目が限られており、これでバランス能力が向上した、と言い切っていいのかは少し疑問が残ります。
もう少し臨床的に使いやすく、かつアウトカムとして標準的に活用されやすいBBSを使った研究を紹介します。
半歩足を下げた起立訓練を行なった慢性脳卒中患者グループは、通常の起立訓練と比較して3分間の立ち上がり回数、TUG、BBSのスコアが大きく向上した。
Farqalit R et al,Effect of foot position during sit-to-stand training on balance and upright moblity in patients with chronic stroke.Hong Kong Physiotherapy Journal.2013;31
内容がSTS 動作を1日あたり100 回、週5日、4週間行うことを目標に個別にトレーニングされました。
セラピストの担当は変えずに行われました。
使用した椅子の初期高さは、下肢長の110%(下腿長40cmなら44cmの椅子)段階的な抵抗トレーニング効果を提供するために、参加者の複数回の立ち上がりの反復を実行する能力が向上するにつれて、4週間にわたって椅子の高さ(90%まで)を段階的に下げるという方法で行われました。
加えて、
トレーニンググループは、ストレッチ運動、下肢と上肢の強化、バランストレーニング、歩行トレーニングなどの監視付き運動プログラムも週5日、4週間行なった結果が、
です。
まとめ
今回同じ課題でも、足の位置を変えたケースとそうでないケースで検討がされています。
バランス能力によって足を引くかどうかを決めていく必要がある、ということです。
実際揃え型の方は、BBS29.3(8.6)の方たち、
足を引いた方はBBS33.9(6.2)なので、対象者のBBSのスコアによって検討してみるのが良いと思います。
起立練習は非常にリハビリの中でも取り入れやすい課題になります。
慢性期においても家族の協力のもと、起立動作を行い後は訪問リハビリやデイケア、自費リハビリなどで必要な標準的なリハビリが行えればバランスが大幅に上昇する可能性があります。
この起立動作の中で、規程は椅子の高さと回数、そして頻度だけですので、
セラピストとして起立動作の中で必要な構成要素を評価して、ハンドリングや電気刺激などを用いてより高い効果を狙っていくことも良いと考えています。
ぜひみなさんの臨床の参考になれば幸いです!
最後まで読んでいただきありがとうございました!