体幹が弱い、座位が崩れる、歩くと体が揺れる。こうした表現は便利ですが、臨床では何が崩れているのかを分ける必要があります。
結論から言うと、TISは、静的座位、動的座位、体幹協調性を分け、座位の問題を歩行や上肢操作へつなげて考える評価です。 ここを押さえると、評価や知識が「名前を知っている」で止まらず、目の前の動作をどう見るかへつながります。
座れているように見えても、リーチで崩れる、骨盤が後傾する、麻痺側へ乗れない、視覚に頼りすぎることがあります。 Activeが大切にしているのは、症状名や評価名ではなく、原因、評価、介入、再評価のつながりです。

結論!Trunk Impairment Scaleは臨床推論の入口です
Trunk Impairment Scaleを学ぶ意味は、専門用語を増やすことだけではありません。臨床で本当に必要なのは、その知識を動作観察と課題設計に変換することです。
脳卒中後の動作は、神経回路、筋活動、感覚、姿勢制御、痛み、恐怖心、生活環境が重なって見えます。そのため、表面的な動作名だけで判断すると、介入が一般論になりやすくなります。
評価は、次に何を試すかを決めるために行います。 点数を取ること、用語を説明すること、検査を実施することは大切です。しかし、それだけでは臨床は前に進みません。どの条件なら変わり、どの条件では変わらないかを見て、次の仮説を作ります。
まず何を見る?静的座位、動的座位、体幹協調性、動作への接続に分けて考える
Trunk Impairment Scaleを扱う時は、ひとまとめにしないことが重要です。分けて見ることで、触れるべき問題と、今は触りすぎない問題が見えます。
| 要素 | 見たいこと | 臨床での意味 |
|---|---|---|
| 静的座位 | 姿勢を保てるかを見ます。 | Trunk Impairment Scaleを臨床で使う時の観察点になります。 |
| 動的座位 | 重心移動やリーチで崩れないかを見ます。 | Trunk Impairment Scaleを臨床で使う時の観察点になります。 |
| 体幹協調性 | 体幹と骨盤を分けて動かせるかを見ます。 | Trunk Impairment Scaleを臨床で使う時の観察点になります。 |
| 動作への接続 | 座位の所見を立位や歩行へつなげます。 | Trunk Impairment Scaleを臨床で使う時の観察点になります。 |
この分解は、若手療法士だけでなく、当事者やご家族にも役立ちます。なぜなら「何が悪いのか」ではなく、「どの条件が整うと動きやすいのか」が見えるからです。
評価を分解できると、介入の優先順位が決めやすくなります。 逆に分解できないまま練習を増やすと、今すでに使っている代償をさらに反復してしまう可能性があります。

よくある誤解。見た目だけで決めない
Trunk Impairment Scaleでよくある誤解は、検査名や症状名で説明を終えてしまうことです。臨床では、同じ見た目でも背景が違うことがあります。
- 体幹低下を腹筋不足だけで説明すると、感覚や骨盤制御を見落とします。
- 座位保持だけできても、動作中の体幹制御が十分とは限りません。
- 体幹練習を床上運動だけで終えると、生活動作へ移りにくいことがあります。
同じ結果でも、原因が違えば介入は変わります。 たとえば、できない理由が随意性なのか、感覚なのか、姿勢制御なのか、痛みなのか、恐怖心なのかで、課題の作り方は変わります。
また、できる場合も慎重に見ます。代償で成立しているのか、麻痺側の能力が変化しているのか、評価室だけでできるのか、生活でも再現できるのかを分けます。
臨床で使うならこう評価します
TISでは静止した姿勢だけでなく、リーチ、回旋、側方移動、骨盤の傾き、上肢操作中の体幹反応を観察します。
ここで大切なのは、一つの検査で答えを出そうとしないことです。脳卒中リハビリでは、検査結果、動画、本人の主観、生活場面、ご家族の観察を組み合わせることで、初めて臨床像が立体的になります。
評価では、条件を変えた時の反応を見ます。距離、速度、支持面、物品の大きさ、視覚条件、声かけ、補助具を変えた時に動きが変わるなら、そこに介入の入口があります。

評価の仕方。この記事だけで実施前の確認ができるように整理します
Trunk Impairment Scaleは、実施条件をそろえて初めて比較できる評価です。 同じ評価名でも、椅子の高さ、歩行補助具、声かけ、測定距離、疲労、測定者が変わると結果の意味が変わります。
評価は点数を出す作業ではなく、次の臨床判断を作る作業です。 ここでは、実施手順、採点構造、判断ポイント、記録表をまとめます。細かい採点基準が定められている評価では、最終的な採点は公式マニュアルや標準化手順と照合してください。
Trunk Impairment Scaleの実施手順
| 項目 | 実施内容 | 誤差を減らすポイント |
|---|---|---|
| 準備 | 支持なし座位を基本に、足部接地、座面、姿勢をそろえます。 | 座面高さと足部支持を記録します。 |
| 構成 | 静的座位、動的座位、協調性を評価します。 | どの下位尺度で低いかを分けます。 |
| 採点 | 合計23点で記録します。 | 質的な崩れも併記します。 |
| 観察 | 骨盤後傾、側方荷重、回旋、リーチ中の体幹反応を見ます。 | 座位から立位、歩行へつなげます。 |
TISは座れるかだけでなく、座位で動けるか、体幹を協調的に使えるかを分けます。
採点構造とスコアの読み方
| 得点・記録 | 意味 | 臨床での読み方 |
|---|---|---|
| 静的座位 7点 | 座位を保つ能力を見ます。 | 姿勢定位と支持の問題を見ます。 |
| 動的座位 10点 | 座位での重心移動を見ます。 | リーチや移乗への影響を考えます。 |
| 協調性 6点 | 体幹の分離と協調を見ます。 | 歩行時の体幹揺れや上肢操作と照合します。 |
| 合計23点 | 体幹機能の総合点です。 | 合計点より下位尺度を介入に使います。 |
TISは体幹機能の評価です。歩行や上肢操作の改善は、TUG、BBS、ARAT、生活場面の動画と合わせて判断します。
臨床判断で見るポイント
| 見るポイント | 確認すること | 介入へつなげる判断 |
|---|---|---|
| 骨盤 | 後傾、左右傾斜、回旋があるか。 | 座面や足部条件を調整します。 |
| 麻痺側荷重 | 麻痺側へ乗れるか。 | 立位荷重や歩行へつなげます。 |
| リーチ | 遠くへ手を伸ばすと体幹が崩れるか。 | 上肢課題の前提条件を整えます。 |
| 視覚依存 | 見ていないと姿勢が崩れるか。 | 感覚運動統合の課題へつなげます。 |
TISの低下は、歩行だけでなく上肢操作、移乗、ADLの不安定さにつながります。
評価記録表
下の表は、記事内で使える臨床記録用の評価表です。公式フォームを置き換えるものではなく、評価条件、点数、動作の質、次の仮説を同じ場所に残すための記録表として使います。
| 下位尺度 | 満点 | 今回点 | 崩れ方 | 次の課題 |
|---|---|---|---|---|
| 静的座位 | 7 | |||
| 動的座位 | 10 | |||
| 協調性 | 6 | |||
| 合計 | 23 |
評価時の注意点
- 転倒しそうな座位課題では近位で安全確保する。
- 足部接地が変わると結果が変わるため記録する。
- 腹筋不足という一語で解釈しない。
確認した資料
臨床で使うならこう介入設計します
介入では、支持面、リーチ距離、物品の位置、視覚条件を調整します。座位で作った制御を、立位、歩行、上肢操作の中で再評価します。
低い項目を、そのまま練習名に変えないことが重要です。 低得点、遅い、ふらつく、使えないという結果は、課題設計の出発点です。そこから原因を推測し、仮説を試すための条件を作ります。
課題は難しすぎても簡単すぎても学習につながりにくくなります。Activeでは、少し頑張れば成功でき、本人が何を変えればよいか分かる課題を探します。
必要に応じて、装具、FES、振動刺激、トレッドミル、視覚フィードバック、環境設定を使います。ただし、それらは目的ではありません。機器や手技は、評価で立てた仮説を検証し、課題を成立させるための手段です。

アウトカムは何を見る?点数、質、生活を分ける
再評価ではTISだけでなく、BBS、TUG、上肢課題、ADL場面の動画を組み合わせます。座位の改善が生活で使える形になっているかを確認します。
アウトカムでは、点数、動作の質、生活での使いやすさを分けます。点数が上がることは大切ですが、点数だけでは、代償が増えたのか、疲労が強くなったのか、生活で使えるようになったのかが見えにくいことがあります。
再評価は終点ではなく、次の仮説の入口です。 変化した項目、変化しなかった項目、本人の感じ方、ご家族から見た生活上の変化を照らし合わせて、次の介入方針を決めます。
Activeではこう見立てます
Activeでは体幹を土台という一語で終わらせず、姿勢定位、骨盤制御、重心移動、反応、感覚のどこが問題かを分けます。
戀田が臨床で特に重視しているのは、代償と回復を分けることです。生活を成立させるための代償は必要な場面があります。一方で、機能回復を狙う時間では、どの条件なら麻痺側の能力が引き出されるかを見ます。
この視点があると、リハビリは「とりあえず反復する」「とりあえず硬いところを伸ばす」「とりあえず歩く」から離れます。何を変えるために、どの条件で、何を再評価するのかが明確になります。
臨床で迷った時は、こう分岐します
まず確認するのは、課題が難しすぎて崩れているのか、それとも必要な能力そのものが不足しているのかです。前者であれば、距離、高さ、速度、支持面、物品の重さ、視覚条件を調整すると動きが変わることがあります。
一時的に条件を変えて動きが変わるなら、その条件が介入の入口になります。 支持を少し加える、視覚情報を減らす、物品を軽くする、距離を短くする、速度を落とす。小さな調整で変化が出るかを見ます。
若手療法士が迷いやすいのは、評価結果をすぐ運動メニューへ変換してしまう場面です。評価結果はメニュー表ではなく、仮説の材料です。なぜその結果になったのかを考えることで、課題設定が具体的になります。
もう一つ大切なのは、本人の主観を評価の外に置かないことです。怖さ、疲れやすさ、動かしにくさ、失敗した経験は、動作の選び方に強く影響します。検査上はできるのに生活で使わない場合、身体機能だけでなく、失敗回避、環境、介助方法、本人の納得感まで確認します。
臨床では、評価結果、本人の言葉、生活環境を同じテーブルに乗せて考えます。 ここを分けずに進めると、評価室では良く見えるのに、自宅では変化が続かないというズレが起こりやすくなります。
自宅と生活場面ではここに注意します
生活場面では、評価室よりも条件が複雑です。床の硬さ、家具の配置、時間の制約、疲労、家族の声かけ、失敗経験が動作に影響します。
自宅課題は、頑張ればできる課題ではなく、安全に再現できる課題から始めます。 痛みが強い、疲労が翌日まで残る、怖さが増える、代償が強くなる場合は、難易度が高すぎる可能性があります。
ご家族が支援する場合も、ただ手伝うだけではなく、本人が使える情報を残すことが大切です。声かけの量、手すりの位置、物品の置き場所、休憩のタイミングを整えると、本人の参加が増えることがあります。
評価の順序を間違えない
最初から練習方法を決めるのではなく、まず現象を観察し、次に原因候補を並べ、優先順位をつけます。その上で、条件を変えて仮説を試します。たとえば、支持を加えると動きが変わるのか、視覚条件を変えると崩れるのか、速度を落とすと質が上がるのかを見ます。
この順序を守ると、介入が「なんとなく良さそう」ではなく、評価に基づいた課題になります。 Activeの8ステップは、この順序を崩さないための枠組みです。問題点を見つけ、原因を推測し、順位づけをして、必要なら一時的な条件変更で再現し、必要な能力を分析し、課題を設定し、反復し、アウトカムで確認します。
本人と家族が確認したい質問
当事者やご家族は、専門用語をすべて覚える必要はありません。ただ、担当者に「何が原因で、何を変える練習なのか」を聞けると、リハビリの見通しが立ちやすくなります。
確認したいのは、今いちばん優先している問題、評価で分かった原因、練習課題の目的、自宅で気をつける条件、次回どの指標で再評価するかです。この5つが説明できると、リハビリはただの反復ではなく、仮説検証になります。
特に大切なのは、次回までに何を観察するかを一つ決めることです。すべてを記録しようとすると続きません。歩行ならふらつく場面、上肢なら使った場面、バランスなら怖さが出た場面というように、生活の中で確認できる一点へ絞ります。
知識を臨床動作へ翻訳する
辞書メディアとして大切なのは、用語を知って終わらせないことです。評価名、神経回路名、介入技術名を覚えても、目の前の動作に戻せなければ臨床では使えません。
知識は、観察、仮説、課題設定、再評価へ翻訳して初めて臨床の道具になります。 この記事で扱った内容も、最終的には「どの場面で何を見るか」「何を変えるために練習するか」へ戻して使います。
特に脳卒中リハビリでは、教科書上の説明と目の前の動作がすぐには一致しないことがあります。だからこそ、知識を丸暗記するのではなく、観察所見へ戻す癖が必要です。姿勢が崩れる、手が使われない、歩行が遅いという現象を見た時に、どの機能、どの環境、どの課題条件が影響しているかを一つずつ確認します。
辞書的な知識は、臨床で問いを立てるためにあります。 何を評価するか、何を変えて試すか、何をアウトカムにするかまで決めて初めて、知識が臨床の行動に変わります。
文献から分かること
このテーマに関する研究から分かるのは、評価尺度や介入技術は単体で完結するものではなく、対象者の状態、測定条件、発症時期、重症度によって意味が変わるということです。
文献は、臨床で仮説を立てるための材料です。 研究で示された平均的な傾向を、目の前の方の評価所見に戻して考える必要があります。
特に脳卒中リハビリでは、機能障害、活動、参加の階層を分けることが重要です。身体機能が変わっても生活が変わらないことがありますし、生活環境を整えることで使用機会が増えることもあります。
臨床でのチェックポイント
- Trunk Impairment Scaleを、点数や名称だけで説明していないか。
- 評価結果を、動作のどの場面に戻して考えているか。
- 代償で成立している動きと、麻痺側の能力変化を分けているか。
- 介入後に、同じ条件で再評価しているか。
- 生活場面での使いやすさや安全性まで確認しているか。
Trunk Impairment Scaleを臨床で使う意味は、評価から課題設計へつなげることです。 読者がこの記事を読んだ後に、次の評価で何を見るかが一つでも具体的になれば、それが臨床メディアとしての価値になります。
次に読むべき記事
参考文献
- The Trunk Impairment Scale: a new tool to measure motor impairment of the trunk after stroke. PubMed
- Development of the Italian version of the trunk impairment scale in subjects with acute and chronic stroke. Cross-cultural adaptation, reliability, validity and responsiveness. PubMed
- Instrumented trunk impairment scale (iTIS): A reliable measure of trunk impairment in the stroke population. PubMed
- Effect of Core Stability Training on Trunk Function, Standing Balance, and Mobility in Stroke Patients. PubMed
この記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療方針を代替するものではありません。症状やリハビリ内容については、主治医または担当療法士にご相談ください。





