今回も論文を紹介させていただきます。今回は、後ろ向き歩行観察トレーニングの効果について、です。今回も最後まで読んでいただければと思います。よろしくお願いします。
研究の背景
脳卒中後のリハビリテーションにおいて、歩行能力の改善は重要な目標の一つです。脳卒中後の運動機能障害は、日常生活における自立性と生活の質に大きく影響を及ぼします。これまでの研究では、従来のリハビリテーション方法に加えて、特定の運動パターンを観察することが、運動能力の改善に効果的であることが示されています。この研究では、後ろ向き歩行観察トレーニング(BWOT)が、慢性脳卒中患者の歩行能力に及ぼす影響を探求しました。
方法
- 参加者:脳卒中を発症後12ヶ月以上経過し、10メートル以上の独立歩行が可能な慢性脳卒中患者14名(実験群7名、対照群7名)。除外項目はMMSE23点以下、視覚や聴覚に障害のある方。
- 介入:従来のリハビリテーション治療に加え、実験群は後ろ向き歩行に関するビデオ観察(10分)後に後ろ向き歩行訓練(20分)を実施、対照群は風景画像のビデオ観察(10分)後に後ろ向き歩行訓練(20分)を実施
- 期間:4週間(週5日の従来治療と週3日の後ろ向き歩行訓練トレーニング)
- 測定:ダイナミック歩行指数(DGI)、10メートル歩行テスト(10mWT)、タイムド・アップ・アンド・ゴー・テスト(TUG)
表1:参加者基本特性
特性 | 実験群 (n=7) | 対照群 (n=7) | P値 |
---|---|---|---|
性別 (男/女) | 6/1 | 3/4 | 0.266 |
診断 (梗塞/出血) | 2/5 | 4/3 | 0.592 |
年齢 (年) | 59.1 ± 10.0 | 55.8 ± 6.2 | 0.474 |
発症からの経過時間 (月) | 30.1 ± 18.1 | 50.4 ± 25.6 | 0.114 |
身長 (cm) | 166.4 ± 5.4 | 162.4 ± 9.4 | 0.350 |
体重 (kg) | 68.4 ± 8.1 | 63.7 ± 3.9 | 0.194 |
MMSE スコア | 27.43 ± 1.16 | 27.57 ± 1.90 | 0.882 |
結果
表2 :介入前後の歩行能力変数の比較
変数 | 実験群 基準値 | 4週間 | P値 | 対照群 基準値 | 4週間 | P値 | Group × time |
---|---|---|---|---|---|---|---|
DGI (スコア) | 12.86 ± 2.41 | 16.00 ± 3.31 | 0.027* | 15.43 ± 6.24 | 16.57 ± 5.99 | 0.023* | P値0.03 |
10mWT (m/s) | 0.44 ± 0.23 | 0.53 ± 0.25 | 0.018* | 0.49 ± 0.14 | 0.54 ± 0.16 | 0.028* | P値0.03 |
TUG (秒) | 35.99 ± 16.34 | 30.34 ± 19.79 | 0.018* | 30.07 ± 18.81 | 27.46 ± 18.04 | 0.018* | P値0.03 |
- 『Group × time』のP値は、両群間での介入効果の時間経過による変化の差を示す
実験群・対照群とも介入前後で、ダイナミック歩行指数(DGI)、10mWT、TUGにて、統計学的に有意な改善を示しました。また、両群間での介入の効果にも有意な差があったことを示しました。
結論
慢性脳卒中患者における歩行能力の改善には、従来のリハビリテーション手法に加えて、観察に基づくトレーニングが有効である可能性があります。後ろ向き歩行観察トレーニングは、特に動作観察と動作実践を組み合わせることで、脳卒中後の運動機能の回復を促進する新しいアプローチとして期待されます。
まとめ
後ろ向き歩行観察トレーニング(BWOT)は、慢性脳卒中の方の歩行能力の改善に効果的であることが分かりました。観察トレーニングは、他者の行動を観察し、その行動を模倣することで新しいスキルを学習が成立するとされているので、個々の能力に応じて選択していきましょう。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!