こんにちは!
見ていただきありがとうございます!
みなさんは「予測的姿勢制御」という言葉を聞いたことはありますか?
予測的姿勢制御ってよく聞くけど、説明しろと言われると…
といった悩みを私自身、若手時代に持っていました。
ですが、今回の記事を読み終わった時には、
「予測的姿勢制御について自分の言葉でざっくり説明できるようになる」
はずです!!
ぜひ最後まで一緒に勉強していきましょう♪
そもそも姿勢制御って何?
BOS(Base of Support、支持基底面)からCOM(Center of Mass、質量中心)が逸脱しないように、定位をし、平衡を保つこと安定性を作り出し、転倒しないようにする仕組みのことです。
BOSは体が接触している地面の領域を指し、安定性を提供します。COMがこのBOS内にある限り、体は安定した状態を保ちます。
しかし、COMがBOSの外に移動すると、体は不安定になり、バランスを失って転倒する可能性があります。したがって、転倒を避けるためには、COMをBOS内に保つことが重要です。
その能力が姿勢制御能力ということですね。
”予測的”姿勢制御が必要な理由とは?
BOSからCOMが逸脱しないようにし、転倒しないための仕組みが「姿勢制御」だと説明しました。
では、予測的姿勢制御とは一体何なのでしょうか?
まず前提条件として、
私たちは常に揺れ動いているため、BOS内にCOMをコントロールするための姿勢制御が無意識に行われています。
上の図を見ると、ただ立っているだけでも足圧中心の軌跡は常に動いていることが表現されています。
では、私たちが動く(肩を屈曲する、リーチ)ときは、体にはどんな力が生まれると思いますか?
それのイメージがこんな感じです!
上肢の質量は体重の約6%程度と言われており、体重50kgの人なら3kg分、体が前に持っていかれてしまいます。
こうなるとBOSからCOMが外れないようにする、という姿勢制御が機能していないため転倒してしまいます。
ですので、これはあくまで「予測的姿勢制御」が行われていない、という条件のイメージ図です。
では予測的姿勢制御が行われている場合はどうなるのでしょうか?
予測的姿勢制御が行われていれば、安全に肩関節屈曲ができる!のですが、
それはBOSからCOMが逸脱するはずのところを「前もってCOMの位置を調整」することによって可能としている「予測的姿勢制御」の働きが必要不可欠なんですね。
この安全に肩関節を屈曲できる仕組みである
「予測的姿勢制御」って何をしているのか?
を最後理解していきましょう!
予測的姿勢制御って何をしているのか?
姿勢制御って何なのか?
そこから
予測的姿勢制御が必要な理由って何なのか?
について理解ができたかと思います。
最後に、
予測的姿勢制御って
1.何を制御しているのか?
2.どのように制御しているのか?
について解説していきます!
予測的姿勢制御って何を制御しているのか?
予測的姿勢制御は日常生活で重要な役割を果たしています。特に立位での上肢リーチ(手を伸ばす動作)は、このプロセスの理解に最適な例です。ここでは、立位での上肢リーチを通じて、予測的姿勢制御がどのように機能するかを解説します。
予測的姿勢制御は、身体が外部の摂動に対して、事前に姿勢を調整するプロセスです。
立位で手を伸ばす際、身体は重心の変化を予測し、落ち着いた状態で手を伸ばせるよう姿勢を自然と調整します。
このプロセスには、視覚や運動感覚など複数の感覚情報が統合された結果として行われると考えられます。
これは動くことによってCOMがどのように変化し、それが今の体の状態ではどんな影響があるのか?をリアルタイムの情報から予測することで行われていると考えられます。
では、このCOMの偏位と、その結果どうなるのか?が予測できたら、どのようにして予測的に姿勢を調整しているのでしょうか?
それが次です!
どのように制御しているのか?
上肢リーチの際、予測的姿勢制御は、目的の物体に手を伸ばすために必要な体の動きを予測します。
例えば、目の前にあるペットボトルを取ろうとする時には、身体は手が目的の位置に到達する前に、
重心を後ろに移動させることでバランスを保ちます。
これは、予測的姿勢制御が今から起こるタスクによって起こる結果を、予測し計算できているからこそ、動的に調整できるんです。
では重心を後ろに移動させる、というのは何によって行われるのか?
それは筋肉を使って、重心を調整する、という仕組みによって行われているわけですね
ではどんな筋肉がリーチ動作時に働くかを見ていきましょう。
実は前方リーチをしていく中では、上肢の筋肉だけではなく体幹筋・そして下肢の筋肉が働きます。
これは上肢の主動作筋である三角筋などよりも、コンマ数秒先に働くとされています。
こういった姿勢調整を行なっているのは、皮質脊髄路よりも先行的に働く、皮質網様体脊髄路であると考えられています。
こういった筋肉の働きを使って、重心をコントロールし先行的に姿勢を調整することで、運動時に転倒したり姿勢を崩すことなく動作が遂行できる、という大事な仕組みなんですね。
脳卒中後にはどうなるのか?
実は脳卒中後には、同年代の方と比較して遅延または消失してしまうことが知られています。
リーチ動作には体幹筋の活動の遅延が報告されていたり、
体幹の変位は脳卒中後の被験者で大きかった。脳卒中患者では、健常者と比較して、体の両側の筋肉におけるAPAの遅れが認められた。
Pereira S, Silva CC, Ferreira S, Silva C, Oliveira N, Santos R, Vilas-Boas JP, Correia MV. Anticipatory postural adjustments during sitting reach movement in post-stroke subjects. J Electromyogr Kinesiol. 2014 Feb;24(1):165-71.
歩行開始時には、下腿の筋肉などの抑制や前脛骨筋の活動の低下などが報告されています。
脳卒中患者では、麻痺脚のヒラメ筋活動を抑制することの困難さ、CoPシフトの減少、推進前力の低下、準備相の延長に伴うTA活動の低下がみられる。
Delafontaine A, Vialleron T, Hussein T, Yiou E, Honeine JL, Colnaghi S. Anticipatory Postural Adjustments During Gait Initiation in Stroke Patients. Front Neurol. 2019 Apr 17;10:352.
そのため、脳卒中後にはこういった部分にも介入することが重要であると考えられます。
\ アプローチ方法についてはこちら! /
まとめ
予測的姿勢制御は、私たちが安全にかつスムーズに動くためには必要不可欠の機能です。
これまで解説したように、予測的な姿勢制御は、外部からの摂動に対する即応性と適応性の高い制御メカニズムです。
これにより、人間は様々な環境での姿勢を維持し、安定した動作を可能にしています。
なので今回は、
- 姿勢制御は、転倒しないためにBOS内にCOMをコントロールすること
- 予測的姿勢制御は、動作時に起こる外乱によって転倒したりバランスを崩さないために必須であること
- 予測的姿勢制御は、動作に伴ってどんな外乱が起こるかを予測し、COMを筋肉によってあらかじめ外乱と相殺できるように調整する仕組みであること
の3つが今回理解できたかと思います!
難しい言葉でもありますが、脳卒中リハビリにおいては非常に重要な知識となりますので、
この記事が、皆さんが言語化できるように勉強するきっかけとなれば嬉しいです!
最後まで読んでいただきありがとうございました!