こんにちは!
いつもみていただきありがとうございます。あくてぃぶ代表、脳卒中認定理学療法士の戀田祐司(こいだゆうじ)です!
脳卒中後に、歩き始める際に多くの方が「麻痺側」の足から一歩目を始めることが多いです。
しかし、内反尖足や引っかかりなどが生じてしまい、その後の歩行が大変になってしまうという場面も同時に見かけることがあります。
実際に脳卒中後の歩き始めはどちらの足から出すのが良いのか?というテーマで解説していきたいと思います!
※担当の医師やセラピストに評価していただき、どちらの足から歩き出すか?を相談してください。
どちらの足から歩き始めるか、って大事なことなの?
歩き始めというのは、日常生活動作で度々行うシチュエーションですが、
この歩きはじめのタイミングに転倒してしまうケースが多いんです。
なぜ歩き始めが難しいのでしょうか?
推進と安定性が同時に求められる、という実は難易度の高い動作になってきます。
つまりこの歩き始めが、麻痺側、非麻痺側どちらから出すか、で安定性が変わるのであれば、
転倒リスクにも関わってくるため、非常に重要なことなんです。
どちらから歩き出す方がいいのか?
結論、
脳卒中後の歩行は、麻痺していない側の足から始めるのが望ましいです。
これは、麻痺していない側の足がより良いサポートと安定性を提供し、転倒を防いだり、歩行中の自信を向上させたりするのに役立つ、ためです。
麻痺側が支えられなくて、支えがきく非麻痺側を使って麻痺側を出す方がいいんじゃないか?
と皆さん考えられて麻痺側から歩き出すことが多いのですが、実はこれは間違いです。
脳卒中後に麻痺側から歩き出そうとすると…
十分に支える非麻痺側へ重心の移動ができないだけでなく、前方に進む推進力を作り出すための重心移動も難しい、ということが知られております。
また、麻痺のない方と比較すると「重心移動が半分」しかないことも報告されており、
麻痺側で歩き出そうとすると、非麻痺側に十分に移動ができず、麻痺側に体重が乗ったまま足を出そうとしてしまうため、
・足が出にくい
・足が重たい
・足が引っかかる
などの現象が起こりやすくなってしまい、過剰な努力を要することになります。
その動作を反復することで、連合反応と呼ばれる力を入れると麻痺側上肢が曲がってきてしまう状態を強めることにもなりかねません。
そのため麻痺側の支持があまりに難しい、感覚障害によって麻痺側の支えてる感覚が乏しく不安定、などの場合を除き、できる限り、麻痺していない非麻痺側から歩き始めを練習する方が好ましいと考えられます。
歩きはじめの仕組み
最後に歩きはじめの仕組みを解説していきます。※専門家向けになりますので、少し難しいかもしれません。
①まず歩行開始前に、振り出し側(遊脚側)にCOPが移動する
この戦略は、支持する側にしっかりと重心を移動するために必要なことです。
私たちは片脚立ちをする時には、足をあげているだけのように感じますが、実際には一度足を上げる側を強く踏み込むことで、支える側に重心を移動しているんです。
②重心移動は立脚側の中殿筋活動を抑制、遊脚側の中殿筋の活動を促通することで行う
重心の移動のためには、遊脚側に一度重心を大きく移動させる必要がありますが、これは支える側(立脚側)の中殿筋という筋肉の活動を抑制することで生じるとされています。
そしてその後に、遊脚側の中殿筋を活動させることで側方へ重心を移動していると考えられています。
この中殿筋の働きに問題が起こると歩き始めや片脚立位がうまくいかない可能性があります。
③重心を後方へ一度移動させる
私たちが前に進むためには、一度かかとにCOPを移動させることで、勢いを作り出し前方へ進む推進力を作るのですが、この時にはヒラメ筋と呼ばれる足関節底屈筋を抑制し、前脛骨筋と呼ばれる足関節背屈筋を促通することで踵側へCOPを移動して、前方推進力を作り出すと考えられています。
脳卒中後の歩き始めの特徴
脳卒中後には、麻痺のない方と比べてCOPに移動が半分しか行えていなかったという報告があります。
この原因として考えられるのが、
麻痺側ヒラメ筋、中殿筋の抑制障害、と考えられています。
これはAPA’sとよばれる姿勢制御の問題、痙縮などによる影響のようです。
まとめ:非麻痺側から歩き出すことで起こるメリットが大きいため、非麻痺側から歩き出そう
先ほどのヒラメ筋の抑制障害は非麻痺側から歩き始めることで改善する可能性があると考えられています。
歩き始めようとすると「内反尖足」が出現してしまうことも少なくありません。
この原因として本来行われるヒラメ筋の筋緊張抑制が難しいことが原因かもしれません。
また非麻痺側から歩き始めると、麻痺側の前脛骨筋の活動が上がった、と報告もあり、足首があげにくい方にも有効な方法だと考えられます。
担当の医師やセラピストにしっかりと相談してから、ぜひ麻痺側からの歩き始めから脱却を図ってみてはいかがでしょうか?