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脳卒中後遺症専門の自費リハビリ「脳梗塞リハビリスタジオActive」を運営している戀田です。

みなさんは、メンタルプラクティスという言葉を聞いたことはありますか?

元々はスポーツ選手が試合前に運動をイメージする、集中するためのルーティンとして使われていましたが、近年ではこのメンタルプラクティスが脳卒中後の運動障害を改善させる可能性について明らかになってきました。

そこで今回は段階的運動イメージ療法という新しい手法について解説していきたいと思います。

Graded motor imagery:GMIとは?

脳卒中や幻肢痛などに対して元々行われていたミラーセラピーというリハビリ方法をもとに体系化された方法です。

名前の通り、以下の3つの段階(Grade)に分けてメンタルプラクティスを行っていくものです。

  1. メンタルローテーション(左右識別・25枚の写真)
  2. 運動イメージ
  3. ミラーセラピー(手指の屈曲ー伸展、前腕回内外)

GMI を行う前提条件として,患者が痛みや脳卒中後の運動障害の機序について,そしてなぜ GMI を行う必要があるのかということをまず理解する必要があるとされています。

GMI を概念的に説明すると,なるべくこの脳活動を抑えた状態から徐々に脳を慣らしていって,運動に関連した刺激(運動想起と実際の運動の両方を含む)に対応する脳活動を最適化する脳のトレーニングということができる。

三根幸彌. Graded Motor Imagery. 徒手理学療法, 2023, 23.1: 27-32.

やり方について

頻度はあまり報告されておらず、長期間(8週間以上)にわたって、通常のリハビリと組み合わせて行うことで効果が期待できるとされています。

①メンタルローテーション

これは、写真25枚を提示していき、1枚づつ右手か左手かを答えるものです。
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まずこちらを使って、画像を見て右手か左手かを頭の中で瞬時に思い浮かべて識別していきます。

②運動イメージ

こちらは手の様々な写真を見ながら、手の画像に合わせて運動をイメージする、つまり自分の手が動いているかのようなイメージをすることが重要です。

この時に大事なのが、1人称イメージをするということです。

どういうことかというと、鏡に映った第三者から見た手の動きをイメージするのではなく、ご自身の視点からの手が動くイメージをするということです。

③ミラーセラピー

鏡を用意して、麻痺側を鏡の後ろに隠して、非麻痺側を動かすことであたかも麻痺側の手が動いているかのような錯覚を起こす、というリハビリ方法になります。

この時の鏡は、小さな手鏡ではなく、できるだけ大きな鏡がいいとされています。

指を曲げたり伸ばす運動と、前腕を内と外に捻る動き(回内ー回外)を繰り返していきます。

この3つを行った上で、従来のリハビリを受けることで上肢の運動機能の改善が期待できるとされています。

3つの段階の理論的な背景について

なぜ3つの段階に分けられるのか、については先ほど解説しましたが、その具体的な段階ごとの違いについて解説します。

左右識別課題では、

運動をイメージしたり実際に運動を遂行する場合と比較して類似した脳活動を呈するが,一次体性感覚野と一次運動野の活動を伴わない、とされています。

一方、運動イメージでは、

運動を実際に行う場合と比較して想像する場合は一次感覚野と一次運動野,さらに補足運動野の活動量が低いが活動することが報告されています。

そして、運動イメージでは意識的に手を一度想起する(体の一部を想起)し回転させて行うのですが、左右識別課題では体の一部は想起せずに遂行される、といった特徴があります。

そしてミラーセラピーでは、

鏡に映った健側の運動を見るとき,対応する一次運動野の活動が両側で起こることが報告されています。

麻痺側に関しては、非麻痺側に対応する脳活動よりも小さいため、実際に運動を行う前の準備としてあらかじめ脳活動を起こしておく、という準備に使える、といった特徴があります。

まとめ

未だ発展段階の方法となっているGraded motor imageryですが、運動障害の改善や痛みの改善に効果的であることが明らかとなってきています。

一方行う順序などに関してはまだ議論の余地があるともされており、今後の発展が非常に期待される方法となります。

あくまでこれだけで改善するものではなく、リハビリテーションを行うための準備として非常に有効なのではないか?というように考えられます。

是非、Graded motor imageryを臨床で適応できるかどうか検証してみてはいかがでしょうか?

参考文献

  1. 三根幸彌. Graded Motor Imagery. 徒手理学療法, 2023, 23.1: 27-32.
  2. Parsons LM, Fox PT, Downs JH, et al.: Useof implicit motor imagery for visual shapediscrimination as revealed by PET. Nature375(6526): 54-58, 1995.
  3. Allami N, Paulignan Y, Brovelli A, et al.:Visuo-motor learning with combination ofdifferent rates of motor imagery and physicalpractice. Exp Brain Res 184(1): 105-113, 2008
  4. Porro CA, Francescato MP, Cettolo V, et al.:Primary motor and sensory cortex activationduring motor performance and motor imagery:a functional magnetic resonance imagingstudy. J Neurosci 16(23): 7688-7698, 1996.
  5. Diers M, Christmann C, Koeppe C, et al.:Mirrored, imagined and executed movementsdifferentially activate sensorimotor cortex inamputees with and without phantom limb pain. Pain 149(2): 296-304, 2010.