今回はハムストリングスの解剖と役割について、解説していきます!
基本動作や歩行、様々な動作において必ずといってもよいほど、何らかの働きがある筋であります!そして、臨床では避けては通れないところであると思います。今一度確認をしてみましょう!
まずは解剖学からです!!
ハムストリングスの解剖について
ハムストリングスは、大腿の後面にある半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋の3つの筋から構成され、大腿二頭筋は長頭と短頭があります。
半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋(長頭)は骨盤の坐骨結節に起始をもち脛骨に停止する二関節筋であるため、主な作用は股関節伸展と膝関節屈曲です。大腿二頭筋(短頭)は大腿骨に起始をもち腓骨頭に停止する単関節筋であるため、作用は膝関節屈曲です。
ハムストリングスと腰部痛との関係について
ハムストリングスといえば・・・、私がまず思いつくのはこれです!!
下肢伸展挙上(SLR)テストです!!坐骨神経の過敏性の評価で用いられますが、その他にハムストリングスの柔軟性をみるためにもよく使用します。そして臨床で腰部痛のある方にハムストリングスがタイトになっていることがよくあります。
ハムストリングの柔軟性低下、腰部側屈、腰椎前彎の制限がLBPの発症リスク増加と関連している。
Sadler SG, Spink MJ, Ho A, De Jonge XJ, Chuter VH. Restriction in lateral bending range of motion, lumbar lordosis, and hamstring flexibility predicts the development of low back pain: a systematic review of prospective cohort studies. BMC Musculoskelet Disord. 2017 May 5;18(1):179.
ハムストリングの柔軟性低下は腰椎前彎の可動域の減少と関連しているといわれており、このメカニズムとそれに続く腰部の硬さによって、腰痛の発症リスク増加の関連性が示されたと思われます。
ハムストリングスの損傷といえば・・・
スポーツの分野でハムストリングの損傷についてよく耳にします。
ハムストリング損傷(Hamstring Strain Injury:HSI)は、スポーツ選手の筋骨格系傷害の中で最も多い傷害の一つであります。ランニング・スプリント・ジャンプの競技で起こりやすく、その中でも特にサッカーで多く起こりやすいとされています。
またハムストリングスの損傷といえば、他に鵞足部炎もあります。
ハムストリングスの1つである半腱様筋と薄筋と縫工筋を合わせた3筋の停止部である脛骨内側部で鵞足を構成しています。この部位にある滑液包が炎症を起こすと鵞足部炎を発症します。
鵞足部にストレスがかかりやすいknee in toe out・外反膝・回内足、ランニング・ジャンプ・ステップ動作などのあるスポーツ(マラソン、サッカー、バスケ、バレーボールなど)でよく生じます。
ハムストリングスの予測的姿勢制御への関わりについて
予測的姿勢制御とは、意図的に先行して無意識に行われる姿勢制御と定義されています。
立位での一側上肢挙上の動作開始時に主動作筋である三角筋に先行して、
- 同側のハムストリングスと大殿筋
- 対側の脊柱起立筋
などが姿勢安定化のために働くとされています。
また座位での前方リーチ動作では、ハムストリングス・大殿筋・脊柱起立筋などが働くとされ、重心が前方へ移動する際にはハムストリングスが姿勢安定化のため先行して働くとされています。
歩行中のハムストリングの活動について
上記の図について、歩行は異なる筋肉の活動をパターン化(Module1~4)し、時間的パターンを分配することによって、行っているとされています。
①立脚初期(立脚初期のかかと接地時の体重受け入れ):Module1・3・4
②立脚後期(立脚後期での体のサポートと前方への推進力):Module2
③遊脚初期(遊脚初期から中期にかけての足のリフトオフ):Module3
④遊脚後期(踵接地に備えてスイング後期に脚を減速し、接地後に骨盤を安定):Module4
ハムストリングスの働きについては、④遊脚後期に下腿の前方推進を減速させ、その後①立脚初期から股関節伸展方向へ誘導し、骨盤が安定するために働きます。
歩行がスムーズに行えるのはハムストリングの働きがあってからこそであります。その他、立ち上がり・階段昇降さまざまな動作においても、ハムストリングの役割は重要とあると考えられています。
以上、ハムストリングスの解剖と役割についてでした!!
最後まで読んでいただきありがとうございました!!