# AFO(短下肢装具)はいつ必要で、いつ外せるか — 脳卒中後の装具の考え方
脳卒中後の歩行リハビリで、AFO(Ankle Foot Orthosis:短下肢装具)を処方される方は少なくありません。足首を固定または補助するこの装具は、多くの場合、歩行の安全性を確保するうえで重要な役割を果たします。
一方で、「装具はずっとつけ続けるものか」「外せるようになることを目標にすべきか」「装具をつけることでリハビリが遅くなるのではないか」という疑問も多く聞きます。この記事では、AFOの役割・使い分け・外すことを検討する条件について、根拠をもとに整理します。
AFOとは何か
AFOは、足関節(足首)の動きを制御または補助するための装具です。素材・構造・機能によって複数の種類があります。
主なAFOの種類
硬性AFO(固定型)
足関節の動きを固定するタイプ。足関節の背屈・底屈を制限します。下垂足が強い場合・足関節の安定性が著しく低い場合に使用されます。
軟性AFO(プラスチック後方板バネ型)
足関節を背屈方向に補助するタイプ。遊脚期につま先が上がるよう補助しながら、ある程度の動きは許容します。最も広く使われるタイプのひとつです。
動的AFO(関節付き)
足関節の動きを部分的に許容する構造を持つタイプ。推進力の生成や筋活動を完全に妨げない設計で、より活動的な歩行を目指す場合に使われます。
カーボン製後方エネルギー蓄積型AFO
踏み切り時のエネルギーを蓄え、推進力として解放する設計。活動性の高い方・長距離歩行を目指す方に向いています。
AFOが必要になる主な理由
1. 下垂足(foot drop)による転倒リスク
前脛骨筋の活動低下によって遊脚期につま先が上がらない状態です。AFOによって足関節を背屈位に保持することで、つまずき・転倒を防ぎます。
2. 足関節の不安定性
立脚期に足関節が安定した位置を保てない場合(内反・外反が過剰など)、AFOによってアライメントを補正することで安定した支持が可能になります。
3. 足関節底屈痙縮への対応
痙縮によって足関節が底屈位に引き込まれる場合、AFOによって中間位または軽度背屈位を保持することができます。
4. 反張膝の軽減
底屈方向に足関節を制御することで、立脚中期の脛骨前傾を補助し、反張膝のパターンを軽減できる場合があります。
AFOをつけることで「回復が遅くなる」か
「装具に頼ると筋肉が弱くなる」「装具なしで練習しないと回復しない」という考えを持つ方がいます。この点について、現在の研究から整理します。
装具の役割は「代償」だけではない
AFOを使用することで、安全に歩行距離・練習量を増やすことができます。練習量は神経可塑性を誘導するうえで重要な因子であるため、AFOによって練習量が増えれば、回復に貢献しうる面があります。
また、足関節が適切なアライメントにある状態での歩行練習は、正常に近いパターンの入力を神経系に与えます。内反底屈位のまま歩く練習より、AFOで中間位を保った状態での歩行練習の方が、正常歩行パターンへの学習に寄与する可能性があります。
装具が常に最適な選択ではない場合もある
一方で、前脛骨筋の随意収縮が得られはじめている段階での硬性AFO使用は、その筋活動を抑制する可能性があります。「装具なしで歩ける可能性があるが、装具があるため練習する機会がない」という状況は避けるべきです。
装具の選択は静的なものではなく、機能の変化に合わせて定期的に見直すことが重要です。
AFOを外すことを検討できる条件
AFOを外すことを検討できる条件として、以下が参考になります。ただし、個別の状態によって判断は異なります。
前脛骨筋の随意収縮が得られていること
遊脚期に自力でつま先を上げられる能力が戻っていることが、装具なし歩行の前提です。座位で「足首を上に向けてください」という指示に対して収縮が見られるか、歩行中の遊脚期にクリアランスが確保できるかを確認します。
足関節背屈のROMが確保されていること
足関節が自動的または他動的に背屈できること(少なくとも中間位まで)が必要です。底屈拘縮が強い場合は、装具なし歩行の前に拘縮への対処が先です。
装具なしでの歩行安全性が確認されていること
装具なしで歩行した際の転倒リスク・歩行効率・パターンを評価します。クリニカルな場での試験歩行を行い、安全性を確認します。
歩行速度・距離が実用的であること
装具なし歩行が可能になっても、実用的な速度・距離で安全に歩けることが目標です。「装具なしで10歩は歩けるが、実用的な距離では危険」という場合は、装具の継続が合理的です。
AFOを外すことが目標になるとは限らない
重要な点として、「AFOを外すこと」自体を目標にすべきケースとそうでないケースがあります。
AFOを外すことが適切な目標になるケース:
前脛骨筋の活動が回復しており、装具なし歩行に向けた練習によってさらに機能向上が見込める場合
AFOの継続が合理的なケース:
- 前脛骨筋の随意収縮がほぼ見られず、今後の回復見込みも限定的な場合
- 転倒リスクが高く、装具なしでの安全な歩行が困難な場合
- 装具なし歩行のための練習より、装具を使った高頻度・長距離の歩行練習の方が生活の質を向上させる場合
「装具を使いながらより良い歩行を実現する」こともひとつの重要な目標です。
機能的電気刺激(FES)との比較
機能的電気刺激(FES)は、遊脚期に前脛骨筋に電気刺激を与えてつま先を上げる装置です。AFOとの違いは、自分の神経系を外部から補助する点にあります。
FESは、外部からの感覚入力を伴うことで、皮質可塑性を誘導する可能性があるとされています(Sheffler & Chae, 2007)。ただし、下垂足の程度・医療へのアクセス・コストなどを考慮して判断します。
まとめ
AFOは脳卒中後の歩行安全性・パターンの改善に有用なツールです。「装具に依存すると回復しない」という考えは正確ではなく、適切に使用することで練習量の増加・正常パターンの入力・安全性の確保に貢献します。
一方で、装具の選択・継続・変更・除去は定期的な評価に基づいて判断されるべきです。機能の変化に合わせて装具を見直す視点と、「装具なしを目標にする必要があるか」を個別に判断する視点の両方が重要です。
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参考文献
Tyson, S. F., & Kent, R. M. (2013). Effects of an ankle-foot orthosis on balance and walking after stroke: a systematic review and pooled meta-analysis. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 94(7), 1377–1385.
Sheffler, L. R., & Chae, J. (2007). Neuromuscular electrical stimulation in neurorehabilitation. Muscle & Nerve, 35(5), 562–590.
Lindén, A., Harlaar, J., & Geurts, A. C. (2014). Orthotic management in chronic stroke patients: a systematic review. Topics in Stroke Rehabilitation, 21(5), 413–432.
