今回は、よくご質問をいただく運動麻痺がなんで出現するのか?の仕組みについて簡単にかつ徹底解説していきます!
メカニズムを知ることで、何をしたらいいのか?どうなるのか?の一助になりますので、ぜひ最後まで読んでいってくださいね!
こちらでも分かりやすく解説しています!
運動麻痺とは何か?
運動麻痺とは、皮質脊髄路の問題によって、自分の意思で単関節を単関節として動かすことができないこと、を言います。
運動麻痺を評価するには、FMAやSIASを用いることが好ましいです。
BRSーTも簡単ですが、評価が細分化されておらず、麻痺の回復過程を評価するのには有効かと思いますが運動麻痺自体を捉えるのには、どこの関節を動かすどんな筋肉(運動)が使えなくなっている(麻痺)かの評価が必要です。
治療としては、随意運動を行うことが好ましいです。
なぜなら、随意運動の障害だからです。随意運動を行わずして運動麻痺を治療することは難しいと思います。
と言っても、一部荷重訓練によって、皮質脊髄路の興奮性が高まる、という報告もありますので下肢に関しては少し意味合いが異なります。
http://www.rehab.go.jp/kiyou/japanese/30th/30-04.pdf
純粋な巧緻運動や単関節運動を目指した改善を図るためには随意運動は必須です。
運動麻痺が出る原因
運動麻痺が出現する原因は「皮質脊髄路に何らかの影響が出ているため」です。
この何らかの影響の中身について解説をしていきます。
皮質脊髄路の一部が損傷している
こちらが有名で学校でもよく習う原因です。
外側皮質脊髄路の一部が損傷している、というものです。
図の左側を見るとよくわかるのですが、脳から脊髄まで随意運動を司る神経が下行しています。
脳血管障害では、この経路の一部を栄養している血管が梗塞を起こし虚血し壊死してしまうパターンと、脳出血によって圧迫を受けて損傷するパターンの大きく2つに分かれます。
特に、
方線冠や内包後脚はラクナ梗塞の中でも、特に脳梗塞を起こしやすい部分となるため、脳卒中=手足が動かせない(運動障害)が起こるとされています。
脳血管障害の部位によって、損傷が予測できる可能性があります。
皮質脊髄路の出発地点の細胞の興奮性が低下している
もう一つは、脳内処理などの問題で一次運動野の細胞が閾値を超えず、興奮しないケースです。
※閾値:細胞が感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの(物理)量。
脳画像などで随意運動の経路である、「皮質脊髄路」は損傷が見られないが運動が起こせないケースはこちらの可能性があります。
その場合には、一次運動野の細胞を今以上に興奮させるための介入が必要となってきますので、病態解釈が異なってきます。
運動麻痺の予後予測は?
運動麻痺の予後は予測できるのでしょうか?
様々な方法が議論されていますが、いまだ完全にコンセンサスを得られたものはないかと思います。
その中の一部を紹介させていただきます。
皮質脊髄路の損傷によるものであれば、やはり麻痺の重症度は高い傾向があるかと思います。
Kwon YH, et al. Combined study of transcranial magnetic stimulation and diffusion tensor tractography for prediction of motor outcome in patients with corona radiata infarct. J Rehabil Med. 2011 Apr;43(5):430-4. doi: 10.2340/16501977-0793. PMID: 21403983.
随意運動のメイン経路になりますので、やはりこれは間違いなさそうです。
ではこの皮質脊髄路の損傷を評価する方法があるのか…?という点ですが、
動麻痺を有する脳卒 中患者で損傷側の運動野をTMS で刺激すると、皮質脊髄路が完全に損傷していない場合には麻痺肢からMEPを誘発することができ、その感度は 66%程度であった。しかし、完全に損傷している場合には90%以上の確立でMEPが誘発されない。
Kwon YH, et al. Combined study of transcranial magnetic stimulation and diffusion tensor tractography for prediction of motor outcome in patients with corona radiata infarct. J Rehabil Med. 2011 Apr;43(5):430-4. doi: 10.2340/16501977-0793. PMID: 21403983.
TMSという特殊な機械を用いることで、評価が可能になることも考えられますが、保険適応ではない点や機械自体がかなり高額、そして医師のみ使用可能なものになりますので、
現時点では、現場で皮質脊髄路の損傷度合いを明確に評価する…というのは難しいことがわかります。
ではどうすればいいのか…?
脳画像の中でどの辺にどんな機能局在、どんな神経経路が通っているのか?をある程度理解しておくことが重要です。
あくまで一つの推測に過ぎない点は注意が必要ですが、脳画像は一つの評価として用いていくことは現場では必要かと思います。
(一つの評価で症状の全体像が捉えられることはあまりないため注意)
ここまでは運動麻痺の予後予測ですが、
次からは運動麻痺を含む「運動障害」の予後予測に関してです。
脳卒中後の運動障害の予後予測
運動麻痺は運動機能障害の1つの所見であり、FMAなどで評価できるのはあくまでも運動機能になってくるため運動麻痺によって起こっているのか
運動プログラム、運動イメージ、感覚障害、姿勢制御障害、高次脳機能障害で起こっているのかは判別が難しいです。
運動麻痺のみが原因となり手足が動かしにくくなっているケースは、体感的にあまりなく様々な問題が関わって「脳卒中後の運動障害」を作り出していると考えています。
ここからは、
運動障害の予後予測についてです。
こちらは、日本で6ヶ月でプラトーを迎えると言われるようになった知見の一つとなりますが、
6ヶ月を境に曲線が緩やかになっています。ただ重症の方に関してはまだ右肩上がりになっていることや、誤差範囲が大きいことも挙げられ、昨今では6ヶ月経過後も運動障害の改善(FMA、ARATなどのスコアの改善)がみられることがわかってきています。
有名な上肢の機能予後の予測として、
こちらがあります。発症時の運動機能は急性期から回復期へ申し送りが必要になりそうですし、
見るポイントが重要になってきます。
また
上肢の機能予後が良好な群と不良な群の差についても古いですが、上記の画像のような条件が挙げられています。
確かに上肢の痙縮は運動機能・パフォーマンスに影響を及ぼすことがわかっています。
Rech KD, Salazar AP, Marchese RR, Schifino G, Cimolin V, Pagnussat AS. Fugl-Meyer Assessment Scores Are Related With Kinematic Measures in People with Chronic Hemiparesis after Stroke. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2020 Jan;29(1):104463.
ただし歩行に関しては痙縮との相関はないとされているため、歩けない、といった問題は痙縮以外が関係している可能性があります。
まとめ
いかがでしたか?
もちろん知っていることも多くあるかと思いますが、
改めて理解をすることで、何をすべきか?どうすれば良いか?が明確になることもあります。
ぜひわからないことは担当セラピストの方に聞くようにしてみてください。