今回は、脳卒中後のトレッドミル歩行の効果について、一つの論文を紹介していきます。
脳卒中ガイドライン2021では
脳卒中ガイドライン2021に、『歩行可能な発症後早期脳卒中患者に対して、歩行速度や耐久性を改善するためにトレッドミル訓練を行うことが勧められる』(推奨度A エビデンスレベル高)とされています。
発症後早期脳卒中患者と記載となっているため、早期ではなく生活期における脳卒中に対しての効果についての論文を探しました。
以下の論文を紹介していきます。
今回の論文
トレッドミル歩行が屋外歩行よりも歩行能力を効果的に改善する。
Langhammer B, Stanghelle JK. Exercise on a treadmill or walking outdoors? A randomized controlled trial comparing effectiveness of two walking exercise programmes late after stroke. Clin Rehabil. 2010 Jan;24(1):46-54.
上記の論文についてわかりやすく解説していきます。
対象者
対象者は50歳以上の脳卒中患者で、民間のリハビリテーション・センターの患者を対象とした。除外基準除外基準は、身体的リハビリテーション・プログラム、リハビリテーションプログラムに参加することが困難であること、言語能力が不十分であること、不安定な心臓状態、脳外科手術、整形外科疾患の既往歴などで歩行を妨げるような問題の方であった。
今回の研究は、単盲検無作為化比較試験で、評価者は盲検化されているが、参加者と運動プログラムを担当した理学療法士は盲検化されていなかった。トレッドミル歩行群と屋外歩行群への無作為化は、封筒の中から不透明な封筒を選ぶことによって行われた。
振り分けられた両群について
振り分けられた両群のデータは上記の図のとおりで、すべての項目で有意差はなかった。
介入方法
トレッドミル歩行群は、トレッドミル歩行30分、速度は最低レベルからスタートし心地よいと感じるレベルまで高められた。屋外歩行群は、屋外歩行30分、快適な速度で必要に応じて通常の補助器具を使用した。天候に関係なく行われた。両群とも歩行以外に、個別療法30分(バランス、筋力、協調性に重点に置いた)、サークルトレーニング60分(持久力、筋力、柔軟性、バランスに重点を置いた)、グループ運動(30分個別に調整されたプログラムで看護師が指導)を実施した。介入期間は週5日・2週間とした。
評価項目は、6分間歩行テストと10m歩行テストを介入前後で実施した。被験者には、安全な範囲でできるだけ速く歩くように指示した。
結果
両群とも、10m歩行速度・6分間歩行距離・6分間歩行速度に介入前後で、すべてに有意な差を認めた。改善度合いが大きかったのは、トレッドミル歩行群であった。
また、両群とも歩行速度は患者によって決定され(心地よい快適な速度と指示していた)、トレッドミル歩行群では平均速度は0.5m/s(0.4-1.1m/sの範囲)で行われていた。
さらに、歩行時間について、トレッドミル群では1回あたり平均12分(平均総時間106.9分)、屋外歩行群では1回あたり平均29分(平均総時間は315.5分)であった。
まとめ
今回の論文から、生活期脳卒中の方の歩行速度向上にトレッドミル歩行が有効であることが分かりました。屋外歩行でも歩行速度向上に有効であるが、介入した歩行時間は平均29分であったのに対し、トレッドミル歩行は平均12分であり、短時間で効果を得られる可能性があります。また、今回の対象者は脳卒中発症後平均1年程度経過した方であり、生活期における脳卒中の方への歩行速度向上に貢献できる可能性があります。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!